ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 幻想郵便局

ああ、今夜も堂本兄弟がめっちゃ楽しかった〜♪とテンションが上がった夜。
明日からの1週間も全然笑顔で乗り切れそうな、そんな気がしてきましたよ!日曜日の夜はやっぱりこんな風に楽しく笑って締めくくりたいなぁ。
ちょうど仕事から帰ってきたオットと一緒に、ふたりでずっとゲラゲラくすくす、笑いながら見てました。
お疲れさまのオットにとってもいい気分転換になったんじゃないかな。
そしてもちろんわたしも(はあと)。
ああ、好きな人たちが、うれしそうだったり楽しそうにしてるのを見るのってなんてしあわせなことでしょう。
KinKiさんたちったら、ほんとにダチョウさんたちが大好きなんだなぁ。
ふたりともビジュアルごと超好みだったし。まさか歌うとは思ってなかったので、歌声まで聴けてここのところの『不足感』がちょっと補われた感じです。むふふ。
…と思わず、今まで見ていた番組の話をしてしまいましたが…このエントリーは本です。
ここからは表題の本の感想です。
この本はたまたま本屋さんをうろうろしていたら見つけて、電車の中で軽く読むのにいいかなぁ〜と思って買ったものです。
帯に「この郵便局には、あなたのなくしたものが届いてる」と書いてあって、この一文にとっても心惹かれました。
そして実際、中目黒と最寄り駅の往復のほんのちょっとの時間で読み終わってしまいました。すっごく読みやすいです。
たくさん読みかけの本やゆっくり感想を書きたい本が溜まっているのですが、フレッシュなものから書こうと思いました。

幻想郵便局 (講談社文庫)

幻想郵便局 (講談社文庫)

商品の説明のところにはこんな風に書いてあります。

内容紹介
就職浪人中の安倍アズサは、「なりたいものになればいい」と親から言われてきたけれど、なりたいものってなんだかわからない。そんなときに特技欄に“探し物”と書いて提出していた履歴書を見て、アルバイト決定の連絡が。アルバイト先は、山の上、ぽつんとたたずむ不思議な郵便局。そこで出あった不思議な人々と不思議な世界とは……。ようこそ、登天郵便局へ。オリジナルのものから改稿し、さらにグレードアップ!

まだ自分のやりたい仕事もよくわからないけれど、のんびりとしている主人公のアズサ、天国に行けずに迷い続けている怨霊の真理子さん、優しい赤井局長に、郵便配達の登天さん、どこにでもいそうなオジサンのルックスにしてオネエ言葉の青木さん、そしてものすごい存在感を放つ大富豪の「大奥様」こと楠本タツエーー人やら幽霊やら神様やら濃いキャラクターがわんさと登場。生と死のはざまという不思議な世界ながら彼らが生き生きと動き、読者がすんなり入りこめてしまう物語は、美しい装丁と合わせて「ほっとあたたかいのにほのぼのと怖い」と評判に。

また「BOOK」データベースには「生きることの意味をユーモラスに教えてくれる癒し小説。」とも書いてあります。

いっとう最初、目次より前に1ページだけ挟み込まれていて、それがなぜか幼い頃の主人公とカラスの間で交わされた会話です。
これどういう意味?とわからずに読み始めるのですが、後になってこの会話がものすごく重要な意味を持って効いてきて、この人(というかカラス?笑)の存在感。
??と思いつつ、時にはイラッとしながら読んでいた彼?のシーンのイメージがガラッと変わる瞬間があって「ああ、そうだったのかぁ〜」と腑に落ちます。
そして読み終わってから、何度も主人公と彼のシーンを戻って戻って味わい直したりもしました。
カラス氏にしがみついて「わ〜ん、大好き!」と泣きたくなります。ほとんどのシーンはそんなに感動的なものでもないのですけれども(笑)
な〜んて超意味深に書いてしまいましたが、極力ネタばれなしにぎりぎりのところを攻めて書いてみました(笑)お時間がある方はご自分で読んで確かめてみて!

このお話はジャンルで言えばファンタジーで、わたしはそもそもファンタジーが大好き。定期的に読みたくなるのですが、いろんな意味で新しいと感じるお話でした。

たとえば「見える人と見えない人がいる場所」が存在するという設定は意外とありそうです。
また「死者のための郵便局」というのも設定としてはありがちかも?だけど、死者だけのための郵便局ではなくて、お客さんには死者もいれば、まだこの世にちゃんと生きている生者もいます。
その存在をちゃーんと知っている人たちだけがやってくる場所です。
局長をはじめ、怪しげな局員たち。配達は配るのではなくて鼎に入れて「燃やす」ことで手紙を届けるという不思議さ。
死者と生者が連絡を取るための仲立ちとなる機関として存在する登天郵便局。
なつかしい恩師との再会。あの世から届く荷物。ひとりひとりの日常の善行と悪行が重箱のすみを突っつく、こと細かに判定され、数値化されて印字されている功徳通帳。
集まってくる人たちそれぞれの物語。死んでいく、死んで行った人たちの思い。残された人の中にずっと残っている気持ち。
いろんな気持ちがこの郵便局という場所であらわになることで、お互いに救われたり、本当の意味でのさようならができるようになるのです。
でもほっこりする話に終始するという感じではなくて、そこには超現実的な未解決殺人事件の秘密が挟み込まれていたり、この郵便局のために立ち退きを余儀なくされた神社の神さまとの攻防が差し挟まれたり。
バイト先登天郵便局でのわけのわからないエピソードたち(笑)
一方で差し挟まれる又いとこの奥さん、エリさんやその子との現実的でちゃんと体温の感じられる日常。
ふたつの世界は、あえて対比されるためだけに並べられた別世界と思いきや、両方の世界がいつの間にか交差して、とんでもなく恐怖を増す後半部分。
適度に刺激的で、ゾッとしたりほっこりしたり、くすくす笑ったり。気楽に読みつつも、この本はいろんな気持ちを運んできてくれました。
未解決事件のキーワードとして、かつての「カローラ2に乗って〜♪」というCMソングが出てきます。
主人公は気がつけばたいして知りもしないこの曲を繰り返し歌ってる。自分の意思じゃなくて、勝手に口をついて出てくるという不思議。
このCMソングはわたしもめっちゃ覚えてて、思わず読みながら一緒になって頭の中でずっとぐるぐるしたりして。
こういう小道具の使い方も上手だなぁと思ったり。
この本を読んでから、作者堀川アサコさんにとっても興味を持って、思わずこの本と共に幻想三部作と言われてる残りの2冊も買ってしまいました。
すごく読みやすい本なので、また電車の中ででも読もうと思います。
最も印象に残ったところは、本編の主旨とは少し遠いかもですが…

「登天郵便局は、本当にここを必要としている人だけを選ぶんだよ。登天郵便局が選んだ人でなきゃ、来ることができないんだから。」

中略

用のない人にとって、ここは決して意識が向かない死角なのだと赤い局長は云った。
物理的に存在しているのに、生者・死者ともに、登天郵便局が必要でない人には、見えていても見えない。ここに来る気も、決して起きない。

中略
「アズサちゃんの生活の中にだって在るのに見えないもの、存在を感知しないものは、他にもたくさんあるはずだよ」

一旦物語から離れて考えてみるに…誰もが同じ景色を見ているようで、その人により見ている光景は決して同じではないのですよね。
見ようとしないものは、たとえ存在していても見えないし、目をつぶろうと思えば見ないで通り過ぎることもできる。
たとえばTwitter。みんなが同じ画面を見て、同じ情報を共有しているようで、実はひとりひとり、みんな自分で選んだ自分だけのTLを眺めてる。
たとえばメディア。たとえば流行や世の中の流れ。
見ようとしないものは、それがどんなに世間をにぎわせていてもちっとも入ってきやしないし、ちらっと異質なものをのぞいたとしても、見たくないものは見ないようにするのも簡単です。
見たいもの見たくないもの、見るべきだけどあえて目をつぶっているもの、いらないとわかっていながら、あえて見てしまうもの。
一人一人の頭の中はみんな違っていて、人生のゴールに向かってみんな自分で選んだ道を歩いてる。
この、生きている人とすでに亡くなった人との間の壁がとっても低い物語を読みながら、どこかユーモラスでのんびりしていて、ふわっと流されつつも、方向を誤らない、そんな主人公の気持ちに寄り添いながら、「現実」の奥深さや残酷や、いろんなことを思いました。