ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 2013 6月 奈良旅 その2(6月9日続き)

この日記は下の日記からの続きです。
ずいぶん歩いたあとは、金峯山寺の参道のお店のひとつでアイスクリームタイム。
オットはシャーベット、わたしは豆腐ソフトクリームを食べて、これがなんとなくお昼の代わり(笑)
いつも昼に食べ過ぎて夕飯がおいしく食べられないというもったいないことになるので、あえてあんまり食べませんでした。
手っ取り早く甘いものでエネルギーだけ補充して、車に戻りこの日泊まる宿の駐車場を指して山を登ります。
宿は中千本にあって、目の前がものすごい坂道になっていて、わたしの運転だったら絶対に無理でした(笑)
ちなみに宿の名前は景勝の宿・芳雲館というところでした。
偶然ネットで検索していてここにしたのですが、これまでの旅で泊まった宿泊施設の中でも一、二を争う素敵なところでした。
オットがチェックインしている最中も、ご主人らしき方と若い男性の方が、ニコニコしながら口々にいろいろと吉野のこと、宿のこと、話してくださって、ああもてなしていただいてるなぁととってもいい気持ちになりました。
お茶とくず餅のウエルカムセットをいただきながら、外の景色を眺めればそこはさらに緑濃い吉野の景色がどこまでも広がっていて、絶景です。

実は桜の季節には、窓の外は一面桜の木・・・なんですって。
この日は宿もそんなに混んでいなかったし、のんびりゆったりでとても過ごしやすかったのですが、トップシーズンだったらこうはいかなかったんだろうね〜なんて言い合いながら、この季節にこれたしあわせを思いました。

ちなみにわたしたちが泊まったお部屋には小さいですが露天風呂がついていました。
風呂好きのオットのために、あえてこの部屋を選んだのですが、眺めがよくてとてもよかったです。
ほんとに外というかベランダに風呂がある感じなので、一度目はまだ日のあるうちに入ったのですが、二度目、寝る前にお風呂に入った時は虫とかいる?寒くない?とちょっと心配だったのですが、意外と大丈夫でした。
虫が出てくるにはまだ早かったのかもしれないし、そこまで寒くも感じませんでしたよ。

ちなみにお風呂からの眺めの中にお寺を発見しました。結構距離はありますが、向かい側とも言えるところに塔が見えて、夜にはライトアップもされてました。
このお寺が前回オットが行きたかったのだけれど遠すぎてあきらめた如意輪寺だということがわかり、テンションが上がりました。翌日は何がなんでも行かなくては!!
夕飯はお部屋で。
ご飯をひとつずつ運んで来てくださる奥さんが、それはそれはおしゃべり上手な方で、いろいろ食材のこと、吉野のこと、食材にまつわるエピソードなどを聞かせてくださったので、さらにご飯がおいしく感じました。
たとえば、何かのお肉のたたき?お刺身?と思われるものがあって、いろいろ説明してくださったのに、そういえばこれが何の食材かおっしゃらなかったなぁ?と思っていたら、まずは「お味はいかがでした?」と奥さん。
わりとさっぱりしていてとてもおいしかったので、そう言ったところ「何のお肉だと思います?」とにっこり。
「いのししかしら?」「カモじゃないの?」「でも、カモにしてはアブラが少ない気がする〜」なんてわたしたちがやりとりしていると、「鹿なんですよ〜」と奥さん。
おぉ、初鹿肉、食べてしまいました。
「かわいそうとかおっしゃる方がいらっしゃるので、とりあえずなんの先入観もなく食べていただいたのですよ」なんて奥さんがおっしゃってらっしゃいましたが、わたしは「それはそれ」「これはこれ」というタイプなので(笑)全然OK。
そもそも鹿が増えすぎて困っている話もそこここで聞くし、実際あの辺り、人が通るところでも、食材となる植物や山菜が鹿に食べられたりもしているそうで、自然のバランスが崩れているのだとしたら、適正な頭数が保たれるために、食材となるという選択肢もあるのだろうとおもいます。
ただし、狩猟をする人も年々減っているそうだし、これと言って鹿の天敵もいないそうで、なかなか大変そうでした。
オットは普段川魚が苦手で滅多に口にしないのですが、この日はあゆが二尾夕食の食卓に並びました。でも、よほどおいしかったのか、どちらも完食。しきりに「おいしい」と言ってました。
新鮮な地元の食材だからというのもあるでしょうし、お水も綺麗なんだろうなぁ。
塩焼きは骨のはずしかたにコツがあるというお話を聞いてゲーム感覚でトライ。
若干失敗もしましたが(笑)そこそこうまくいって、上手に骨だけがするする〜っと抜けて、ひとくち口に入れたら、びっくりするほど美味。
川魚特有の臭みもまったくなく、それはそれはおいしい塩焼きでしたよ。
さらにもう1種類はなんと唐揚げ。

下に敷いてある白い麺はなんと吉野葛を素揚げしてあるんですって。
これがパリパリしていて、一見固焼きそばの麺みたいな感じですが、もうちょっとあっさりしてます。岩塩をつけていただいたのですが、とってもいいアクセントになっていて、おいしいかったです。
さらに、上に乗っているあゆの唐揚げがこれまたパリパリ。
骨や頭まで余裕で食べられるし、まるで風味のいいおせんべいみたい。
これはお酒の肴にもぴったりだと思いました。

もう一品はくずの入った鍋。
これもまたとろとろで絶品でした。
鍋の中に入っていた油揚げやお豆腐があまりにもおいしいので、これも地元のお味なのですか?と伺ったところ、とても素敵な話が聞けたのでご紹介します。
このお豆腐は吉野でも有名な、とてもおいしいお豆腐屋さんのものなのだそうです。
このお豆腐屋さんは、今はお孫さんが継いでらっしゃいますが、少し前まで90を超えたおじいちゃんがやってらしたのだそうです。
このおじいちゃん、腕は確かで、とても美味しいお豆腐を作られる立派な職人さんですが、何分にもお年なので、晩年、たとえばトップシーズンに宿の食事用に30個とお豆腐を注文すると、大きいのやら、小さいのやら、形もまちまちなお豆腐が配達されてくるのだそうです。
さらに、なかなか注文したお豆腐が届かないので、心配して見に行ってみたりね〜と奥さん。
おじいちゃんの運転が危なくて、今日はこの木とぶつかっちゃった。今日はガードレールとお相撲を取ってしまった・・・配達途中のお豆腐が崩れてしまった・・・といろいろあったそうです。
それでもここのお豆腐は味がとってもいいのでね〜みんなで見守りながら、ずっと「宿でのお豆腐はここのに限る」と同じお店で注文し続けてらしたのだとか。
この話はとてもとても印象に残りました。
工場で作られたお豆腐なら、形は365日いつだって一緒でしょう。30個と言えば判で押したようにちゃんと時間通り30個配達されるだろうし、あとは切るだけお料理するだけでお客さんに出すのも楽でしょう。
でも、わざわざ老舗のおじいちゃんのお豆腐をみんなで大切に守り、注文し続けた旅館の方々。
まちまちな大きさのお豆腐を工夫してお料理してお客さんに出したり、なかなか届かない心配をしたりしながらも、ずっと守り続けられた美味しい味。
そして受け継がれたその味は、今も変わらず旅館の自慢の味のひとつになっているのです。
ああ、このお話の中には、今の世の中が忘れかけているとても大切な要素が含まれている気がする・・・と思いながら、寝るまでこの話を噛みしめておりました。
翌日宿の前の坂を降りていったところにある工場や、吉野の目抜き通りにあるそのお豆腐屋さんも訪ねたのですが、ここはオススメです。詳しくは翌日の日記に載せますが、ぜひぜひ吉野に行かれることになったら、このお店のお豆腐やお豆腐のドーナツや、豆腐ラーメン、おあげをお召し上がりください。
翌朝は今度は朝ごはん用のお部屋で朝の光を浴びながら朝食タイム。

ここからも眺めが最高でした。

そして食事の中に、また昨夜の美味しかった油揚げを発見して大喜びのわたしたち。
この日は火で軽く炙って焦げ目をつけて、シンプルにいただきました。
心のこもった和の食材がいっぱい並んでいる中に、オレンジジュースもあって、これがいつも以上にとても美味しく感じたり。お豆腐のシンプルながら濃い味に下鼓を打ったり。
オットはとんかつとかお肉ジューなお料理も大好きなのですが、そんなものはひとつもなくても、こんなに食事を楽しめるということにとても驚いているようでしたよ。
ここのところ、煮物とか焼き物が大好きなわたしは、もうど真ん中のお食事ばかりで大満足。
帰り際は昨日から気になっていた鹿さんの額の話で盛り上がりました。
これ、旅館の近所の方の手作りなんですって。
うちの母も押し花をするので、とても興味深く拝見しつつ、画像に撮らせていただきました。

これです。
素敵だったなぁ。
今度行くことがあったら、また泊まりたいお宿です。友達みんなとワイワイ行って、みんなで女子会っていうのもいいかも!?
お宿のみなさん、お世話になりました〜