ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

最近読み終わった本たち その1

読み終わった順番に書いていきます。
県庁おもてなし課 有川浩

県庁おもてなし課

県庁おもてなし課

アマゾンの本の紹介のところにはこんな風に書かれています。

内容(「BOOK」データベースより)
地方には、光がある―物語が元気にする、町、人、恋。とある県庁に突如生まれた新部署“おもてなし課”。観光立県を目指すべく、若手職員の掛水は、振興企画の一環として、地元出身の人気作家に観光特使就任を打診するが…。「バカか、あんたらは」。いきなり浴びせかけられる言葉に掛水は思い悩む―いったい何がダメなんだ!?掛水とおもてなし課の、地方活性化にかける苦しくも輝かしい日々が始まった。

本文中に「お役所仕事」という言葉が何度も出てきました。
普通、この言葉は公務員じゃない人が公務員を揶揄して(あるいはやっかんで)使われることが多いような気がしますが、この本はそのお役所で仕事をしている側の県庁の「おもてなし課」のみなさんの奮闘物語です。
「おもてなし課」とは観光立県により高知県の地域活性を目指すために作られました。主人公は25歳の若い職員掛水くんです。
そして、主人公たちの気持ちに寄り添って読んでいるうちに「お役所仕事」と言われるとグサっとくるようになってきた自分に笑いました(笑)親族ほぼサラリーマンという家で育ったので、役所の側の人間として物語のなかにどっぷりと浸るなんて、なかなかできない経験ができて、とっても新鮮でした。
ちなみに作家の有川さんも高知のご出身なのですって。そして、実際に高知県の観光特使になってらっしゃるのだそうです。
圧倒的に杓子定規なものの見方が幅をきかせている役所というところで、今までのやり方で何が悪い!と思っている方々の意識を変えることのむずかしさ。前例のないことに挑むことの大変さ。
金銭感覚をはじめとして、民間と役所の間にある大きな大きな壁。
若手職員の主人公が、どんなにいいアイディアを思いつこうが、なかなか身内に理解してもらえません。どの壁よりも高い役所の壁。
そこを超えて初めてスタートする「おもてなし課」のほんとうのお仕事の数々。
高知県へ観光客の誘致を狙って行うことは、最初、どれもお役所仕事で民間からは全然相手にされないばかりか、あまりの詰の甘さ、穴だらけでスタートしてしまったツケがどんどん回ってきて、やる気だけで空回りしてゆく「おもてなし課」のみなさん。
そんなに簡単なことではありません。
そんな時、ピンチを救うおもてなし課を支える役所の外の大事なキーパーソンたちが出てくるのですが、この人たちがすごくよかったです。
地元高知出身、今は東京に住んでいて、観光特使に任命された、なにかと主人公にダメ出しをする若手人気作家吉門氏。
そして、かつての役所の伝説の観光部職員。現在は娘と民宿経営のかたわら、観光コンサルタントをしている男。
彼らとの出会いにより、目が覚めたように動き出すおもてなし課の皆さま方。
どんな風に?という中身は実際に本をご覧になっていただいた方がいいと思うのですが(笑)
ちなみにこの親子のことをもうちょっと詳しく書くと。
最初別々に登場したふたりは、実はワケアリの親子でした。
ふたりの間には血のつながりはなく(息子は今は別れてしまった妻の連れ子だった)今はもう書類上の縁は切れちゃってるのですが、別れて暮らしていても親子の心のつながりは切れていませんでした。
子どもの頃出会ってからずっと、父を慕い尊敬し父のようになりたい、いつか父に人として認められたいと思っている息子。
今でも心から実の息子のように思っていて、おもてなし課との関わりにより、また息子との暮らしが始まり、頼られることがうれしいおとうさん。
結局のところ、血のつながりよりも心のつながりだし、たとえ血はつながっていなくても、育ててくれた人にもらった宝物はちゃんと義理の息子の心でちゃんとたゆまず育まれている。
法律的には紙切れ一枚で家族じゃなくなっても、いったん培われた家族としての心のつながりが消えるわけではない。
この物語的事実の圧倒的な安心感の上で、とても気持ちよくしあわせな気持ちで本筋を追い、物語を読むことができました。
物語は主におもてなし課の仕事を縦軸に進んでいきますが、横軸にふたつのかわいい恋物語も並行していて、微笑ましいふた組のカップルの少女漫画的胸キュン要素もあります(笑)
ちょっと現実的ではないかも?そんな簡単じゃないでしょ?と思ったところもありましたが、さらっと楽しく読めるし後味もさわやかでした。


☆天国旅行 三浦しをん

天国旅行

天国旅行

この本は友達からのいただきものです。
短編集ですが、テーマがすべて「心中」という斬新さです。
多分自分からはあんまり選ばないタイプの本だという気がしましたが、どのお話もひとひねりがきいていて、巧いなあと思いました。
心中がテーマなのに、なぜかほのぼの系のお話もあり、いい余韻の残るお話もあり。
ホラーのように怖くて心底ぞぞーっとするものもあり。
最も怖くて未だに思い出してもぞっとする話は、死んで幽霊になってしまった恋人と一緒に暮らしている大学生の話「星くずドライブ」です。
どうやら彼にだけ今は亡き恋人の幽霊が見えているらしい。
普通にしゃべり、生前と同じように同棲は続いているのですが、彼女の遺体はなかなか見つからず。
最初彼は、恋人が死んでいるということにすら気がつきませんでした。
ややあって警察に届けたものの、その死の真相は一向にわかりません。
当の死んだ本人も死んだ瞬間のことだけは全然覚えていないと言います。どうやらひき逃げされたらしいのですが、誰にひかれたのか、どうやって死んだのかもさだかではありません。
それからもずっと片時も離れず彼女はそばにいて、それまでと何らかわらないほのぼのとした同棲生活が続くのですが・・・
ある日、彼はぞっとするようなリアルな夢を見ます。
自分が彼女をひき逃げして、丹念にアリバイ工作をして山に埋めている夢。
その時まで、自分が彼女を殺したかも?とはよもや思っていなかった彼ですが、あまりに夢で見た世界がリアルで、自分を疑ってみたりもします。
そしてやがてまさしく山の中で、夢に見たとおりの白骨化した彼女の遺体が見つかり、誰が殺したのかも結局は藪のなか。
彼が逮捕されることもなく、実態のない彼女は一向に成仏する気配もなく、葬式の間も日常に戻ってもずっとそばにいて・・・
幽霊との生活はこのまま永遠に続くのだろうか?彼女が見えるのは彼だけだし、もう別れるということもない。
それじゃあ彼女と心中したのとおんなじだ・・・という話。
ゾゾゾゾーーーーっ!!(笑)
逆に一番好きだった話は亡くなったおばあちゃんの初盆に現れた珍客(実は幽霊)におばあちゃんの隠された真実を教えてもらう話「初盆の客」。このお話のオチも好きでした。
また、樹海での出来事を綴った「森の奥」。
これは意外なことに、途中くすくす笑えたりもして、好きな展開でした。
そして一家心中の唯一の生き残りの男性の今を描いた「SINK」かな。
これも最後まで読むと生きるということに対する希望が透けてました。
死をテーマにしているようで、逆説的に生きるということをいろいろと考えさせられたようでもあり、いつまでも余韻の残るお話だったなぁと振り返っています。
熱帯夜が続く今年の夏の納涼的な意味を考えるとピカ一でした(笑)

まだまだ続きます。(今のところあと4冊読み終わっている本があります。紹介だけを含めるとあと6冊かな)