ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

まほろ駅前多田便利軒

原作は三浦しをんさん。先週原作ファンの友人たちと一緒に見に行ってきました。
公式サイトはこちらです。
映画館は有楽町のスバル座
立地は有楽町の駅の目の前にあるのに、一歩入ったら昭和な感じでとてもなつかしい雰囲気。
もちろん建物はとても古いのですが、よく手入れされていて、昔ながらの手作り感たっぷりの良さがあちこちにあって、とても気持ちのよい空間でした。
たまたまこの日見たこの映画がこの映画館にとても合う雰囲気を持っていたので、更に居心地よく感じたのかも。
さて、本を読んだ時に感想をたっぷり書いた覚えがあります。なんせ大好きな本だったので。
その時の本の感想はこちらです。
この大好きな物語を映画で見た時にどんなことを感じるのかな?と思っていたのですが、見終わってすぐに思ったのは「ゆるかったなぁ」ということ(笑)
今まで見た映画の中で案外似ていると思った映画は「ファンタスティポ」かな(笑)
たとえばちょっと間や撮るところが違えば容易に笑いになるようなところが投げっぱなしで終わっていたり、もうひとこと…というところで描写が途切れたりします。
別に笑わそうなんて思ってるわけじゃないよ…という風に見えたり。
登場人物は、原作も配役もとても個性的で、おもしろい人たち満載なのですが、あえてすべてのエピソードは風が吹きぬけて行くようにさらっとやってきてさらっと流れていきます。不思議なタッチです。
主人公多田くん役の瑛太氏と行天役の松田龍平氏は意外にはまり役だと思いました。
ふたりとも心に深い傷を負っていますが、さらっと愛想よく、でも必要以上に人と関わり過ぎないように気をつけている多田くん。
彼のところに転がりこんで来た、どこか掴みどころがなくてふわふわひらひらしている、不思議ちゃんの行天くんとの噛み合わない会話。
でも次第にいることがあたりまえになってきます。
そして長い長い間。
沈黙の中でたばこを探すふたり。たばこを取り出してどちらからともなく火をつけるふたり。
シンクロする動作。あるいはつられてたばこに手を伸ばすシーン。どちらかが黙って長々とたばこを吸うシーン。言葉はないのに何かを語り合っているかのように見えたりもしました。
わたしは煙草を吸わないし、普段煙草を吸う人が好きというわけでもないですが、ふたりのこれらのシーンはとても印象的でした。
原作をよく読みこんでいるものですから、あのシーンは、あのエピソードはもうちょっと丁寧に見たかった…と思ったシーンがたくさんありました。
たとえば自称コロンビア人のルルとハイシーとチワワを挟んだシーンに、遠くまでアイスクリームを買いに行くという素敵なエピソードを入れてほしかったなぁとか…
健康オタクで高校生の彼女がいるチンピラの星くんの登場シーンがもっとあってもよかったのに…とか。彼と彼女とのラブラブシーンも見たかったなぁとか。
この物語は映画の中に収めるにはムリがあるくらい内容が濃いので、連ドラで見たかったような気もします。
じっくり12回くらいで、このキャストでじっくり腰を据えて見たいような気もしました。
でも、本庄まなみさんの凪子さんのシーンとか、胸が締め付けられるほどそこにはいない行天くんに心を持っていかれて、映画を見て数日は頭の中が、映画の中の行天くんでいっぱいになったりもしました。軽く風邪を引いたかのような、短い恋をしてたかも(笑)
松田龍平氏、以前から気になる俳優さんでしたが、行天くんになりきっていてよかったです。
掴みどころがなくて、どちらかと言えばカッコワルイ。しかもテキトー。なのになんであんなに魅力的なんだろう!?不思議です(笑)そんなむずかしい役を好演してました。
一方で多田くんの抑えた演技がとっても新鮮だった瑛太くんもまた、新しい感じの役柄で、とても素敵でした。その多田くんが、過去の傷を思い出して苦悩する場面、思わず感情が溢れ出してくるシーンもとても印象的で心に残りました。
そして気がつけば、あんなにゆるゆるだと思っていたのに、その世界観にどっぷりと引きずり込まれていた不思議な映画で、わたしはそういうのがとっても好きなんだと思いました。
それにしてもわたくし、どうも掴みどころがない人にとっても惹かれるらしいということがまた証明されてしまいました(笑)
オットは掴みどころがない人ではないけれども(夫婦関係で言えば、きっとむしろまったくわけわからない、掴みどころがないのはわたしでしょうけれども、笑)
行天くんってAB型かなぁ?なんてどうでもいいことをぼんやり考えながら見てきた映画でありました。
しをんさん、またこの本の続編を書いてくれないかなぁ。しをんさんのお話がまたいっそう読みたくなりました。