ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 天平を駆け抜けた男と女たち

 やっと週末に時間ができたので、オットと時間を区切りながら結構ていねいに見ました。
 前半の金堂大改修のドキュメンタリー部分も再度オットと見たのですが、各方面のその道のプロの方が、木の年輪から木が切られた年である781年を割り出したり、ほんのちょっとの痕跡から調査分析し最新のCGを駆使して金堂の華やかな彩色を再現したり、興味深いことがたくさんありました。
 コンピュータに打ち込まれた膨大なデータを元に、天平時代のままに再現していく場面のすごさに目をみはりつつも、一方で「鴟尾(しび)」にひびを入れないように作ることが思いのほか困難という場面もありました。
 職人さんが「宇宙へ行く時代に 何で1200年前と同じものをつくるのに苦労しているんやろ」と弱音を吐く部分もあって、新しい技術や考え方が必ずしもベストではないかもしれないし、古代の人々が当然のように知っていてわたしたちがまったく知らないこともたくさんあるという歴史の不思議さを思いました。
 唐招提寺のご本尊の盧舎那仏が脱活乾漆像(漆を何層にも塗り固めてでできた、中が空洞の造り)だそうですが、最近阿修羅さまの特集で見たのと同じ造り方だと知りました。当時の「漆」がいかに高価で希少なものだったのかというあたりの話がとても興味深かったのですが、だからこそその貴重なものを「たくさんの人々の心に勇気や安らぎを与える仏像に」というのは素敵なことだなあと思ったり。
 わたしは今までに2度唐招提寺を拝観したことがありますが、いずれも工事中だったので、次回奈良に行くことがあったら今度こそちゃんと隅々まで見て来れたらと思っています。
 ドラマ部分に関してはやや細切れの感はありましたが、如宝という人の信じた道をひたすらにいく生き方がとてもとても素敵だと思いながら見ていました。
 師、鑑真の教えの元、激動のこの時代に何が起こっても動じることなく信仰を守り続けることはどんなにか困難だったことかと思います。
 こうして大きな時代の流れをいっぺんに見てみると、藤原氏の台頭にしても、道教が力をふるった時代にしても歴史の中のほんの一片にも思えますが、その時々を生きている人々にとっては右にも左にも道が見えず真っ暗やみの時代が途方もなく長く見えただろうなあと思います。
 そんな時代の中で大きな声を上げて人々を啓蒙するやり方もあるでしょうが、どんな世の中になろうとも、どんな風向きになろうとも、ひたすらに忍耐しながら時を待ち金堂を建立という夢を実現させた如宝は、静かな中にも生半可ではない意志の強さを感じました。
 最後まで見てみると、しみじみとした味わいのあるドラマだったと思います。
 ズルをして、最初に歌の部分だけを見てしまったのですが、やっぱりこのドラマをちゃんと見てきてから主題歌が流れてくるとまた全然違う感慨がありました。

目を閉じて何も見えず 哀しくて目を開ければ
荒野に向かう道より ほかに見えるものはなし

という歌詞で始まるこの歌は、このドラマにとっても合っていたのだなあとあらためて。
 ここまで有名な谷村さんの「昴」なので、他の人が歌うこの曲が全然想像できなかったのですが、実際に聞いてみると、ご本人とは全然違う歌い方で、つよしさんの「昴」になっているということに一番驚きもし、すごいなあと思ってました。
 どちらがよりいいとか悪いとかではなくて、単純に「ここまですでに耳についている歌に影響されず、よく自分テイストでうまく歌ったなあ」という感慨だったのです。
 しかし、じっくりドラマを見たあとであらためてつよしさんが歌う昴を聞くと、ただ谷村さんとは違う味を出して上手に歌っているというだけじゃなくて、癖のないまっすぐな声の音色を選んで、穏やかにやさしいトーンで歌ったのは、多分ドラマの内容ともリンクさせようと意図してのことだったのだろうと思ったのです。
 つよしさんの歌声が誠実で物静かな如宝のお人柄ともかぶって、更にしみじみとした素敵な余韻を残してくれました。
 残念ながら主題歌が始まってからもずっと女声のナレーションが入っていたので、最後の歌はあんまりちゃんとは聞こえませんでしたが、物語の途中でも何度もはさまったし、CMでも何度も流れたし、ファンとしてはいっぱいわくわくをもらったし、しみじみとこの声が好きだ〜と思わせてもらったし、大満足でした。
 年齢的なものもあるかもですが、最近こういうドラマやドキュメンタリーにとても興味を持ち始めていて、更につよしさんに影響を受けて奈良や奈良時代にもいろいろと興味がわいているところだったので(5年前だったらまったく興味を示さなかったかもです。ましてやこんなに熱心に見るとは思いませんでした、笑)、更にいろいろ楽しめた気がします。
 歌だけをじっくりと味わいたいと思ったら、ドラマの最後よりも直前予告の方がいいかもです。
 ここでも多少ナレーションは挟まりますが、なぜか歌優位になっていて、この間から編集して残そうと思っているのに、ついついこの直前予告につかまってはうっとりとつよしさんの「昴」を聞き倒しているうちに「明日にしよう」という状況が続いています。
 いつかご本人が生でこの歌を歌ったり、谷村さんとコラポしたり、ナレーションのないバージョンの音源も聞けたらいいなあ。