- 作者: 群ようこ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: 文庫
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今まで群ようこ氏の本と言うと、「トラちゃん」とか「下駄ばきでスキップ」とか「無印OL物語」とかを読んだことがあったのですが、イメージしている群ようこさんの作品とはだいぶ違っていました。
映画にもなったので、ご存じの方が多いと思いますが、わたしは先に本を読みました。映画のDVDも借りてきたいです。場合によってはそばに置いて、何度も見たいと思うかもしれないという予感があります。
さて、本の話です。舞台はフィンランドで、宝くじの当選から始まる物語なのですが、どんな華やかなお話がスタートするのかと思いきや、淡々と物語が進んで行きます。
登場人物は主人公が38歳の独身女性で、後々一緒に暮らしたり働いたりする女性ふたりもそうですが、どちらかというと地味であまり目立たないような地味な女性たち。読み進んでも穏やかに日々が流れていて、色恋沙汰もなければドラマチックな展開もありません。
でも、3人が交わす言葉ひとつひとつがていねいで、使うべきところできちんと敬語を話し、仲良しになっても無遠慮にはならず、お互いの気持ちを静かに思いやったり、困った時にやさしく手を差し伸べあったりする描写はとても美しくて、日本人女性の忘れかけていた美徳みたいなものを思い出しました。ああ、こういうことを忘れちゃいけないな〜というのをしみじみと感じながら、とても穏やかな気持ちで読めた1冊です。
この本を読んでいると、なにげない何も特筆すべきことがない毎日が、宝物のように、とてもとても大切なものに思えてきます。
等身大の人生を、まっすぐに誠実に歩いていけばいいんだなあと思わされます。
ただ…すごくおっとり読んでいて、途中でふと気がつくのですが、「舞台はヘルシンキだし。まわりはみんな外国人だし。おにぎりを売っていても???な反応だし。大人にさえ見られていないし…」
そうそう、これはあまりなじみがない外国で起こっている出来事の数々なんだわ…と思うとすごく不思議。
とっても日常的でありふれた出来事がありふれていない場所で、そもそも宝くじというまったくもってありふれていないきっかけで動き出したお話なのです。
そんなことをつらつら考えるに、ちょっとファンタジックな感じの、でも同時に不思議と現実の手触りみたいなものがちゃんと感じられる、面白い作りになっているんじゃないかと思います。
初めての人と会うときなど、なんかおもしろいことのひとつも言わなきゃいけないような気になったり(笑)つまらない人間なんじゃないかと思われないかなぁ?なんて心配したりすることもありますが(笑)面白い人にはなれなくても(笑)、大仰なことばで飾り立てなくても、魅力的な人はちゃんとまっとうに魅力的に映るんだ〜と思いました(笑)
もちろん…最も大切なのは、人としての中身なんでしょうけれど(笑)