ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 がんばれ! 

ここのところ、息子やオットが熱心にWBCWorld Baseball Classicを見ています。
今日も勝って、日本は3連勝で一次リーグを一位通過。

二次リーグも始まるし、まだしばらく我が家のテレビが野球に占領される時期が続きそうな気配です。

わたしは20代くらいの時はしばしば球場に通ったり、家で必ずナイターを見るくらいの野球好きでしたが、今はわりとおだやかに、誰かが見ていれば一緒に見るというくらいのテンションです。

というか、家の中に濃厚な巨人ファンと濃厚な阪神ファンがいるので、わたしは永世中立国状態です(笑)
危なくってどっちにも賛同できませんってば(笑)

怖い!怖い!

とはいえ、野球を見るのは今も好きです。

WBCもかぶりつき・・・というほどではないけれど、結構楽しく見てます。

今回は、たまたま直前にやっていた中居くんが司会のスポーツ特番を(途中からでしたけど)見ていて、この番組でもWBCで活躍するであろう選手たちがいろいろ紹介されたし、とても興味が沸いています。

自分もとても野球好きな中居くんが、プロ野球選手やOBと一緒に作っているバラエティー特番とかがあると、我が家の野球好きが気がついてなくても録画ボタンを押したり、一人でも見たりしてしまうのは、彼がほんとに野球を愛し、選手を愛し、選手やOBたちからも絶大な信頼を得ているのが伝わってとても微笑ましいからだと思います。

過日の特番でも往年の野村氏やら村田兆治氏ら、スゴイ方々に孫のようにかわいがられたり、ちょっと強引に転がされたりもしつつ(笑)上手に大スターを持ち上げたりつっこんだりして笑いを取ったり。

視聴者の聞きたいポイントは外さずに、ちゃんと話が逸れてもそこにうまいこと戻したり。

絶妙におもしろい番組になっていて、最後までとっても楽しく見ました。

中居くんは自らの努力でどんどん仕事の場を広げていて、ほんとうにスゴイ人になってきたなぁと思います。
KinKi Kidsがふたりとも中居くんにとても信頼を寄せる気持ちがとてもよくわかります。

仕事人としても人としても、とっても芯があるもの・・・

だからこそ、同業者のみならず、スポーツ選手やおしゃべりのプロの方々、お笑いのみなさんなど、さまざまなジャンルの方々に愛され、認められているのだろうと思います。

そして今回のWBCでは「侍ジャパン公認サポートキャプテン」を務めている中居くんとともに、亀梨くんも一緒にゲストとして出演していたのも、とても素敵だと思いました。
ちらっと見ただけでも、先輩後輩のいい意味での緊張感のあるいい雰囲気が伝わってきました。

おっと話が逸れちゃった。

さて。

話をWBCそのものに戻して。

実は今日の試合は、レッスンが長引いて、その後家事をしていたのでほとんど見れなかったのですが、ひとつ前の試合はわりと時間があって、ちゃんと見ていた、その時の話です。

表題はオーストラリア戦。

日本のピッチャーが、一番手の菅野投手から二番手の岡田投手にチェンジした直後の印象的なシーンです。

岡田投手が替わり際、緊張からかいきなり2球目に暴投。
そのあともちっともストライクが入りません。

だんだんに険しくなっていくその表情。

さらにボールが続き、傍目にも「うわぁ岡田選手、気の毒!!」という感じで、あっという間にありえないくらいのピンチになってしまいました。

中継ぎのピッチャーが立ち上がり乱調というのは、普段のペナントレースでもよくあることですが、こういうとき、強烈なヤジが飛んだりすることがよくあって、わたしはその直接的過ぎる反応に辟易するのが常なのですが…

この日はなんだか雰囲気が全然違っていました。

客席のあちこちから「岡田がんばれ〜っ!!」という熱のこもった声が散発的に飛ぶではありませんか!!
申し合わせたわけじゃなくて、ほんとに心の叫びがまんま出たというような自然な声です。

オトートと思わずびっくりして顔を見合わせました。

その後も岡田選手の乱調は続き…
どんどん緊張感を増していくドームの空気。

顔が曇りさらにこわばっていく岡田選手…

ああ、気の毒だ!

何球投げてもストライクが入らなくて、これはどうしたもんだろう?なんてひやひやしていたら、さらに大きくなる会場からの「がんばれ〜」の声。

WBCでは鳴り物がないので、声とか拍手とかが応援の手段で、いつもよりも声が届きやすいということもあるのかもしれないですが・・・

さらにもう1球ボールを投げたところで…

巨人の坂本選手が、笑顔にも見える感じのやわらかい顔で、不意に岡田選手に「がんばれ〜」と声を掛けたのです。

その場面がテレビの画面に映し出されて。

叱咤激励する感じではなくて、言葉はがんばれ!だけど「大丈夫!できるよ!」と伝わるような「がんばれ!」でとても素敵だと思ったの。

すると・・・

その坂本の声に誘われるように、会場中から大きなうねりのようになった「がんばれ〜」の声と大きな拍手。

誰もが「ああ、今、ピッチャーは最大のピンチを迎えている」というのがわかる場面で、これほど温かい拍手や応援が巻き起こるなんて、ほんとに素敵!

わたしは岡田選手を意識して見たのは、前日が初めてくらいだったのに、なんだかその瞬間を目にして、思わずウルウルしてしまいました(笑)

さらにそれで終わりじゃなくて。

次の1球では、キャッチャーの小林選手が岡田選手の元に駆け寄りなにやらごにょごにょ。

その絶妙なインターバルがよかったのか、次の球でゲッツーに仕留めて、点が入らずに済み…

一つの山場を越えて、日本の方に流れがきて、勝敗が決まったといってもいいくらい。

なんだかとってもいいシーンだったね〜とオトートと再度顔を見合わせてしばらくにこにこと感想を言い合ってました。


「がんばれ」はわたしが小さい頃は、おまじないの言葉のように、誰もが使う言葉でしたが、昨今、気がつけば悪者みたいになってしまいました。

「がんばれ」が重すぎて、苦痛に感じる人がいることもよく知っているので、わたしは生徒とか子どもたちには、むやみやたらに「がんばってね!」とか言わないように気をつけています。

でも。

わたし自身は「がんばれ」という言葉は言うのも言われるのもそんなにイヤではなくて。

この言葉でしか言い表せない瞬間というものが、人生には時々訪れる気がしています。

この瞬間「がんばれ」の中に「今までがんばってないじゃないか。」とか「がんばり足りないから言わせてもらう!」というようなニュアンスはまったく込めていません。

「がんばるのはあたりまえ」・・・もちろんそうでしょうとも。

「みんながんばってるんだよ!」・・・うん、ほんとうにそう。

それはよ〜くわかっているけど、あえて「がんばれ」という言葉が当然のように市民権を得ていた頃に(笑)教育を受けた者として、その用法を説明させてもらうなら。

わたしにとっての「がんばれ」は、ほんとうに絶体絶命で、もう逃げられない事態が訪れた時の「あきらめないための言霊」で。

あと半歩、最後の力を振り絞るためのおまじない、祈りのようなものでもあるような気がします。

誰かに向けて(言うかどうかは別にして)思うときは、それこそ最大限の祈りをこめます。

どうぞ精一杯がんばってるこの人を助けてあげてください!神様・・・的な。

もちろん相手がどう捉えるかが何よりも大事だから、この言葉をこの瞬間投げて、相手にダメージを与えてしまうようなら、どんなに善意であったとしても心で思うだけにとどめて、直接投げてはいけないと思ってますが…

きのうの坂本選手のおだやかな「がんばれ」は確かに若い投手にとっては、心を温めるエールになったと思うし、会場の「がんばれ」が決して選手を叱咤しているわけじゃない、痛みを分け合いパワーを分けてあげたいという気持ちが口をついて出たものであることは、伝わったんじゃないかと思います。

ただ家事をしながらちらちら見ていたわたしが、振り向いて思わずウルウルしちゃったくらいだから(笑)

もうちょっと言えば、わりと坂本選手って我関せずなイメージで(あくまでもイメージですけどね、笑)よけいにそう思ったのかもしれないけど。

この時は、彼の「がんばれ!」をきっかけに、球場中がひとつになった素敵なシーンのように思えたので、思わず再現してしまいました。

と、この話だけで終わろうと思っていたら、こんな記事を見つけました。

『山田から幻弾少年へ「またグラブ持って応援に来て」』

とてもいい話なので、よかったら元記事を読んでみてくださいね。

これは「山田選手が打ったボールを、スタンド最前列で観戦していた男子中学生が、スタンドに入る前に、とっさにグラブを出してキャッチしてしまったために「勝ち越し2ラン」が消えてしまい・・・
二塁打と判定され、幻のホームランになってしまった・・・という事件の話でありました。

幸いにもこのあとに日本チームにたくさん得点が入り、勝敗に影響は出なかったのですが、あまりの残念な成り行きに一時期ネットが騒然となり。
どうみても、この中学生の行為は、やってはいけないことではあったものの、応援していたからこそのファンたちの怒りのパワーはすさまじく。

たとえ相手が未成年であってもお構いなしに拡散してつるしあげようという雰囲気。
どんどん人から人へと広がっていく真実かどうかもわからない匿名の人の言葉。

やっぱりネットってほんとに怖い!と思い知らされた事件でもありました。

そんな中、翌日、スポーツ紙にて発せられた山田氏のコメントの素晴らしさったら!!

こんな風に書いてありました。

記事からちょっと引用させていただくと・・・
(本文は色の違うリンクからどうぞ)

喜びにわくロッカー室で着替えているときだった。何となく無音のテレビに目をやると、あのシーンが流れていた。手が止まった。目に入ったのは捕球直後に大喜びする、丸刈り頭。「グラブを持って来てくれたんだから、野球少年なんでしょうね」。責める気持ちなど、わくはずがなかった。

 そしてこの日の朝、歯を磨きながら、ふと、丸刈り頭のことが気になった。スマートフォンを手に取った。「うつろな表情で、フードをかぶったまま。青ざめていた」とあった。落ち込んでいると知った。だから、伝えたかった。「僕は全然気にしてない。だから野球を嫌いにならず、またグラブを持って応援に来てほしい」。絶対に打ちたかった。

 それだけではない。侍ジャパンの試合に、グラブを持って来た少年だ。「これも何かの縁だし、将来プロ野球選手になって、一緒に『あんなことがあったね』と懐かしい話ができるように頑張ってほしい。僕も完璧な本塁打を打てるように頑張ります」。


山田選手はかねがね選手として、本当にスゴイなぁと思ってましたが、この発言の素晴らしさにますます応援したくなりました。

ずっとずっと昔から、スポーツ観戦に熱くなるあまり、怒鳴っちゃう人とか、感情で誰かを批判しまくる人はいたけど、それはその場のヤジだったり、茶の間の暴言だったりで済まされることが多かったように思います。

でも、今はネット社会だから、「冗談じゃないぞ!」と思うと、そのまんまの勢いで世界中に発信できてしまう世の中なのが本当に怖いと思います。

オトートにはよく「その場の反射神経みたいな感じで、特に怒り任せにつぶやいちゃダメだからね!!」とかねがね、彼が子どもの頃から言ってきましたけど。


何事もこんな風に解決できたらいいのにと思います。

人と人とが怒りをぶつけ合うのではなく。
ただただ許さないとなじるのではなく。

ましてや 過ちを犯した未成年に対して、怒りではなく、こんな風に真摯に対するのはとてもむずかしいことかもしれないけれど。

同じ野球を愛する者として、最高峰という場所にいる先輩が、矢面に立つ後輩に対して、最大限の英知あふれるエールを送る。

少年はきっとしてしまったことの重大さに震えていたと思うけれど、彼の人生はこれから変わるんじゃないかな。

そして、オトナなんて信じられない!保身とウソばっかり…なんて思わされている、昨今のたくさんの若い子たちにも、この言葉は大きな希望を与えたと思います。
こういうこそ、大々的に取り上げて、伝えたらいいのになぁと思います。

さらに、この記事を見て思い出した、時折ネットを見ていて思うこと。

応援している「対象」がなんだかとっても不憫に感じたり、多分彼が、あるいは彼女が・・・悲しんでいるに違いないとか。

実は怒ってるんだけど言えないんだろうとか。

ひとりでスマホやパソコンに向かっていると、いろいろと想像を働かせてやきもきすることがあるかもしれないけれど。

この幻のホームラン事件においても、山田選手ご本人は、試合にしっかりと集中していて、オンザウエイでは、まったく何が起こっていたのか把握していなかったそうです。

でも、応援しているファンからしたら、山田選手はさぞかしがっかりしたに違いない!とか、悔しかっただろう・・・とかファンであるが故に心を寄せすぎてしまうところもあって、ここまでの騒ぎになってしまったのかもしれない・・・とも思うのです。

その気持ちは正義感とか、野球や選手への思い入れとか、多分とても純粋なところから出発しているのだけれど。

それが中学生を責めるという行為につながったとしたら・・・山田選手はもちろん喜ぶわけもなく。

むしろとてもとても悲しむことでしょう。

「わたしの気持ち」と「スターの気持ち」が必ずしもイコールとは限らない。

悲しんでいるのはあくまで自分。苦しいのも自分。がっかりしたのも自分。

スター(他人)の気持ちをわかったように思っちゃダメだし、ましてや自分と同化させちゃダメだなあと。

そこはちゃんとわかって、こちら側にいなければと思いました。

好きが余って「ここ」を混同し始めたりしないように。

それは多分どんなジャンルにおいても起こりうることだろうと・・・自戒を込めて。