ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 またですか・・・な土曜日ほか。

先日大々的に書いたリカちゃんの初レッスンはとんでもない波乱ぶくみのスタートになりました。

というのも、前日にいきなりおかあさまからメールが来たのですが、その内容がこうでした。
「今日、図工のとき、彫刻刀で指を切って3針縫ってしまったのですが、明日レッスンに行っても大丈夫でしょうか?」

ええええーーーっ!?

さらに、こう続きます。
「幸いにも左手なので支障は少ないと思いますが・・・」
いえいえいえ。
どんなに初心者であっても、両手を鍵盤に乗せてスタートするつもりでした。

とはいえ、すごく楽しみにしてくれていたようだし、本人がいやと言わなければ、ぜひぜひ予定通り来てもらえれば!と返しました。

楽譜もほとんど読めないと聞いていたので、ワークブックからスタートするもよし。
右手が全然平気なら、わたしの左手と連弾するもよし。
三手連弾っていうのもありだし。

当日も病院に寄って消毒してからではないと行けないので、遅くなるかも?とのことでしたが、「本人は行きたがってます!」ということなので、それならわたしの方は何の問題もないですよ?とお返ししました。

たまたまその日は、リカちゃんの後の中学校の先生の生徒さんが、スキー教室引率のためお休みだったし。
タイミング的にも願ったり叶ったり。どうにでも対応できる日でよかったです。

結果的に言うと、彫刻刀で切った場所は中指の指先ではなくてほとんど手の甲に近い部分だし、鍵盤を叩くくらいならちっとも痛くないそうだし、ほんとのほんとの初心者なので、まだ1の指と2の指しか使わなかったしで、ちっとも困らなかったし。

何よりもピアノに触るのがうれしくてうれしくてたまらないキラキラしたその瞳に心打たれてしまいました。

ああ、この日のこの顔を絶対に忘れちゃいけないな!と思いました。
レッスンを重ねていくうちに、だんだんにお互いに新鮮さを失って、彼女のこの顔が曇るようなことがないように・・・肝に銘じようと思ったリカちゃんの初レッスンでありました。

さらに。

今週は他にもうれしいことがありました。

1年生のまーこちゃんは週に3回くらい練習するというのがアベレージの子だったのが、ここ3週間くらいずっと毎日練習するようになっていて、急激に上手くなったのです。
スゴイね〜いっぱい練習するようになったね〜えらいね!多分先生の小さい頃よりもずっと早く上手くなってる気がするよ?と言ったら、にっこり。
ただし、その時はなぜ急にそんな風にいっぱい練習するようになったかはわからずだったのですが、数日後謎が解けました。
おかあさんに道でお会いしたときに教えてくださったのです。

それはたまたまレッスン室にあった、忘れ物のモカちゃんのレッスンノート。
モカちゃんは先日の全校音楽会でピアノの伴奏をしたので、一年生3人娘(まーこちゃん、こゆうちゃん、ことちゃん!)のあこがれのおねえさんです。

そのモカちゃんのノートを見つけてくれたのがまーこちゃんで、3年生がどんな曲を弾いているのか、ちょっとだけ見てもいい?と聞いてきました。

各自のレッスンノートに、それぞれ何が書いてあるかというと、毎週の宿題とその週に仕上がった曲がわかるようにシールが貼ってあるのと。
あとは、曜日が入っていて、その週に練習した曜日にシールが貼ってあるのです。

その子によっては日記的に使っていたり、おかあさまから結構深刻な悩み事や、家での様子が書かれていたりもしますが、モカちゃんのノートには、特にプライバシーに触れるようなことは書いていないのも知っていたので「見ていいよ!」と渡したら・・・

「へぇ〜もうバイエル終わるんだね!」とか、「すごいピアノパレードが4だ!」とか「千と千尋だって!わたしもこれやりたい!」とか。
曲に関することをいっぱい語っていたのも記憶に新しいところだったわけですが。

実はそんなこと一言も言ってなかったくせに、まーこちゃんったら、モカちゃんのノートにびっしり貼られた練習シールを見逃していなかったのでした。
ちなみにモカちゃんは本当に勤勉で、旅行以外でピアノを弾かない日はほとんどありません。
インフルエンザになった時だって、どうしても弾くと言っておかあさんに止められたくらいですから(笑)

まーこちゃんは、そんなモカちゃんの、月曜日から日曜日まで毎日気持ちよく全部貼られているシールにいたく感動して影響を受けたのだそうで(笑)
おかあさんによれば、その日から突然「毎日絶対に練習する」と自分で決めたのですって。

この自分で決めた!というのがとっても大事で、そうなると強いです。
自分の意思でがんばりはじめ、成果が上がる体験をすると、ものすごい勢いで成長していきます。

あとは成果を見逃さずに、ひたすらに褒めるだけ(笑)

もちろん、このまんまずっとこの練習習慣が続くとは限らないけれど、こういう成功体験をしておくと、その後もきっと本気でやりたいと思ったときに「あの時できたのだから。」と思うことができるはず。

そのまーこちゃんは女の子だけどわりとガキ大将タイプで、神社などで遊んでいるところに行き会うとたいがいちびっこ軍団を仕切っていることが多いです。
男子にも負けないで、どうかすると泣かしちゃうくらいで(笑)スゴイなぁと常々思ってました。

ところが・・・

先日神社会館に来た大人の人になにやらこの軍団が叱られているではありませんか!!

とってもびっくりして、割って入ろうかどうしようか迷っていたら・・・後ろの方にいたまーこちゃんがしり込みしている子ども軍団をかき分けて一番前まで出てきて
「ごめんなさい。神社会館にボールを当てないように、これからはみんなで気をつけますから。」と真っ先に謝っているではありませんか!!

叱っていらしたおじいさんも、あんなかわいい一年生に正面きってしっかり謝られたらさすがにそれ以上怒ることはできません。
にこにこと「気をつけてくれればいいんだよ!気をつけてくれればね。」って(笑)

すごいな!まーこちゃん、ほんと勇気あるな!謝るときも先頭きっていけるなんて、女の子だけどオトコマエ〜なんて思いながらにこにこと立ち去ったわけです。

で、次にレッスンに来たときに、まーこちゃんは本当に勇気があるね。スゴイね。なかなかできることじゃないね。と感じたとおりほめまくったら、ほんとにうれしそう。
男子を泣かしてるだけじゃないんだなぁ、ほんとに(笑)と感心しきりなできごとでありました。

最近妹が生まれたばかりで、ずっと6年間ひとりっ子として育ってきたから、大丈夫かな?ってとっても心配なんです!とおかあさんがおっしゃっていたけど、ぜ〜んぜん心配いらないではありませんか!!

ほんとうにまっすぐに育って〜と痛く感動したのでありました(笑)

さて。

最後が表題。

おとといは土曜日。

となると、話題の主は・・・やっぱりことちゃんでありました。

「またですか。」と書いたということは?・・・そうなのです。
またもやことちゃんは泣きながら現れました(涙)

しかも今回はただごとではない悲壮感が漂っていて、それでも一人で涙をこらえて、意を決したようにおかあさんと別れてうちの玄関に入ってきて、靴を脱ぎながら何かつぶやいてる・・・

え?なに?と近づいて顔を寄せたら・・・

「ことちゃんはダメな人間。」「ダメな人間。」
「死んじゃったほうがいいんだ。」「死んじゃったほうがいいんだ。」と小さな声で繰り返しているではありませんか!!

心底仰天しました。

何があって、まだ生まれてたった7年間しか生きてない子が自分のことを「ダメな人間」なんて言うのだろう?
「死んじゃった方がいいんだ」ですって?

なんでよ?(涙)

誰よ、そんなことを言ったのは???(怒)(怒)(怒)

ピアノ部屋に入ってもずっとしゃくりあげていて、でも健気に譜面台にピアノの本は並べてみたものの、やっぱり下を向いてこのふたつの言葉しか言わなくて・・・
わたしはたまらなくなって、後ろから彼女を抱きかかえてピアノの椅子に一緒に座りました。

「ことちゃんはダメな人間だから」と何度も何度もつぶやくので、それを言うたびに「ことちゃんはダメな人間なんかじゃないよ?」と繰り返すわたし。

気の利いた言葉なんて何ひとつ思い浮かばず、おうむ返しに「ダメな人間だから」「ダメじゃない」「ことちゃんはダメな人間だから」「絶対ダメなんかじゃない。」と30回くらい応酬したんじゃないかな?

そしてもうひとつ「死んじゃった方がいいんだ」はもっと衝撃的で「死んじゃった方がよくないよ」「絶対死んじゃダメ」と変な日本語になりつつ繰り返し言っ合っているうちに、わたしまで涙がにじんできてしまって、マジで号泣5秒前みたいになってしまい・・・必死でこらえつつ、死んだ方がいいなんて言っちゃだめ。ことちゃんが死んだほうがいいなんて思ってる人は誰もいないよ。みんな悲しいよ。いやだよ!とひたすら不器用に繰り返してました。

何度も首を振りながら、ことちゃんはダメな子だからってまだ繰り返す。まだまだ繰り返す。

こんなに真面目に受け止めちゃう子に、なんでそんなことを言うかな??

誰が言ったかはだいたい見当がついていました。

おかあさんから「直前にまた、パパが稽古をつけていて、喧嘩になってしまいました。先生ごめんなさい。」と聞いていたのです。

最初は哀しいやら悔しいやら、本人もまったくピアノに向かえるような空気ではないやらで、ちゃんとレッスンが始められるまでやっぱり時間がかかってしまったのも悔しかったわけですが。

ハッとしたのはレッスンノートを開いてから。

前にも言いましたが、彼女のおかあさんは毎週毎週、一ページずつ、その週の練習風景や、どれがむずかしかったか、どの曲にどんな反応をしたかをびっしり書いてくださるのですが、そこにこう書いてあったのです。

「両手になるところがどうしてもできず、やっぱりパパに怒られて途中で泣いてしまい、もうイヤだとピアノから離れてしまいました。」
「その後、パパとふたり、別々にコタツの隅と隅にもぐりこんで、ふたりとも泣いてました。」
「インフルエンザでちょっと休んだくらいで感覚が取り戻せなくなるなんて」と泣きながらパパ。
「声も出さずに泣いている『こと』でした。」

そのあとにこんな風にも書いてありまいた。

「いつも喧嘩ばかりのパパとことちゃんですが、本当はとても想い合っていて、お互いのことは心底大好きなんです。どうしてこうなっちゃうのかとわたしも心の中で泣きながら、いつも2人を見守っています。長い目で見てください。」

ここを読んだら怒りはどこかへ飛んでいきました。

パパもまた苦しいのだなぁと思います。

普段から彼女は上手にコミュニケーションが取れないところがあるから、なんとかパパも職業にしている、自分が得意なピアノで彼女にも自信をつけさせてあげたいのだと思うし、ピアノが得意だとなれば、それだけでもっと生きやすくなるに違いないと考えていらっしゃるのかもしれない?と思ったり。

そして多分、そんなひどい言葉を投げたパパ自身が娘に投げたひどい言葉に一番傷ついてしまったのかと。
だからと言ってそんな言葉は、間違っても大好きな娘に絶対に投げるべきではないと思うけれど。

週にたった一度45分会うだけのわたしに一体何ができるだろう?何がしてあげられるのだろう?

心の中で忙しくいろいろと考えつつも、わたしはわたしのやり方でやるしかないと腹をくくって、やっぱりマイペースにいつも通りにレッスンを進め。
やっと笑顔が戻ったのが20分を過ぎた頃。

どうしても楽しかったと思って帰ってもらいたかったので、「できない」と泣いた曲はほんのちょっとにとどめ、あとはひたすら前に戻ったり、少し簡単な片手を弾き継ぐ曲を連弾したり、時にはあえ彼女が大好きなクレヨンしんちゃんの歌にも脱線しつつ、レッスンをしました。

彼女は決して起用ではないので、課題的にはすぐに成果が見えないかもしれないけど、今は一生懸命に音楽と友達になれるように種まきをしている時期で。
遅々として進まないと感じているかもしれないけれど、毎週たくさんの歌を歌い、リズムを打ち、ゆっくりとではありますが、たくさんの曲に触れ、指を動かし心を動かす作業は、絶対にムダじゃないと思うのです。

重ねた日々はきっと先に行って効いて来る。

今までの経験からしても、最初不器用でなかなか両手で弾けなかった子が、いつまでもピアノを好きでいてくれて、保育科に行って立派にピアノを使ってお仕事をしている子もいるし。
ピアノを通じて音楽が生涯の友達になれれば、絶対にいつか、音楽が彼女を助けてくれる日が来るはず。

書きながら自分にも言い聞かせてますけど(笑)

何よりわたしはもう、あとには戻れないくらいにことちゃんが大好きで、彼女の泣きたい気持ちが痛いほどわかって、だけどそれでもなんとか前に進もうとする彼女が愛おしくて。
あふれそうな気持ちをもてあましつつ、表面上はいつものようにレッスンを終えました。

ピンポーン!とインターホンが鳴り、「ママだ!」と大喜びで外へ出ると、しがみつくようにママの腕にくっついて「よくがんばったね〜」と声を掛けたママの顔をみてまたうるうるしてました。

そのママへのしがみつき方が、あまりにも切実だったので・・・さらにさらにせつなくなったわたし。

彼女のなかでピアノが修業の場になっていないといいなぁと思うのです。
ピアノに来るイコールパパに怒られるになってたらイヤだな。
我慢していくところだったら本当に哀しいな。

それにしても45分が短いです。
いつも熱心に稽古をつけてくださるパパは、きっと娘が「うまくなった」という実感を感じていないのだと思います。
どうしてうまくならないのだろうと焦れていらっしゃるのだ思うのです。

ただ弾けるようにしてあげればいいのなら、わたしもスパルタで、練習曲を弾く以外、ムダなことは一切しなければいいのかもしれないとも思います。
それでことちゃんがパパに褒められるようになって、笑顔でレッスンに来れたらピアノも楽しくなるのかもしれません。

でもでもでも。それは諸刃の刃で、まだ準備がしっかり整っていないのにムリを強いると、どうかすると本当にピアノが修業になってしまいます。
いやなこと。でもやらなくてはならないこと。人を喜ばせるためにやること。
彼女は実はとても頭がよくて、人の気持ちに敏感な子だから、なんとか期待にこたえようと一生懸命がんばるかもしれない・・・

それでも最初にそうしてあげれば後がきっと楽だから、そうした方がいいのか?と考えると、どうしてもイエスとは言えないわたしもいて。

「もうちょっと長い目で見てあげてください。」としか言えないわたしがいて。

「気持ちはとってもよくわかりますけど・・・」

「まずはことちゃんが自然に音楽と仲良しになって、ピアノが音楽と仲良しになる手助けをしてくれると彼女自身が実感を持って思えるときがきて、自分からピアノともっともっと仲良くなりたいと思うまで・・・どうぞ無理強いをしすぎないで気楽に待っていてもらえませんか?」

とレッスンノートに書きました。

そうは言ってもお月謝がかかることだし、手を抜いてのんびりやってるんじゃないか?と疑念を抱かれているのかもしれないけれど。

ここが大事なところな気がするので、そこは謙虚に受け止めよう。
これでいいとは思わずに、わたしももっともっとがんばって、彼女に合ったやり方をいろいろと試してみようと思ってます。

それにしても・・・とりあえず泣かさないで連れてきて欲しい・・・と切実に思う今日この頃。

まずはわたしがご両親にとって信頼のできる人にならなきゃダメなんだ!
そう思うととても気が重くて途方もなく道が遠く思えてしまった週末でありました。