ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 スティーヴ エトウさんの駄々打独演会 打楽器と映像による独りパフォーマンス 玉川区民会館ホール 3月23日

パーカッショニスト、スティーヴ エトウさんの独演会に行ってきました。
もちろん彼の生音には何度か触れたことがありますが、ソロで行われるライブに参加したのは初です。
これを書くにあたりwikiってみたら、パーカッショニストの文字のあとに括弧でくくって『重金属打楽器奏者』と書いてあるのが斬新で面白いです。
なんと玉置さんとも同い年でいらっしゃってとってもびっくり。
さらに同級生に小室さんとかサンプラザ中野さんとかもいらっしゃるんですって。
ちなみにスティーヴさんの公式サイトはこちらです。
さて。
そもそも玉川区民会館ホールは想い出の地です。
高校生くらいから一番最後はアネを妊娠中くらいまで、ずっと毎年ここで開かれるピアノの発表会に出てました。
一緒に行ったショコラ嬢もまた、部活でここ、玉川区民会館でギターの演奏をしたことがあるそうで、お互いに別々にだけど想い出の地だし、スティーヴさんの音は聞いてみたいと思っていたしで、すぐに意気投合して申込みました。
当日。
会場の入り口付近に行ったら、大まかには自由席…ということもあって、すでにたくさんの人が並んでました。
まだちょっと早かった?なんて言っていたら、まだ開場時間前なのに列が動き出したので、列の後ろへ。
目を凝らして中を見たら、なんとスティーヴさんが入り口にいらっしゃって、ふっつーにお客さんたちを出迎えてらっしゃるのが見えました。ドキドキドキ!
この日のライブは2種類の席があって、片方はおみやげ付き、センターブロックに座る煩悩席という素敵なネーミングのお席となってます。
もう片方は悟り席と言って、サイドや後方の席でおみやげはなしです。
どちらにする?となった時、せっかくなら真ん中ら辺で聴いてみたい気がするし「おみやげ」も気になるしで、わたしたちは煩悩席をチョイスしました。
そして、列はあっという間に中へと吸い込まれて、わたしたちの番になって、チケットをもぎってもらったら、スティーヴさんご本人から直々におみやげを渡していただきました。うっひゃーっ!!
ちなみにそのおみやげはこれ。

ひとつひとつ手作りだそうで、頭が下がりました。お人柄がわかります。
木でできたトレードマーク焼印入りのものは、ひとつひとつご自分で焼いてらして、やけどしそうになったり、木のとげがあるかもしれないので注意とおっしゃってました。
ご自分も作っている途中で、刺さってまだ抜けてない棘があるそうです。
これ、すごくいい木の匂いと木が焦げた匂い。なんだか山口の田舎を思い出す香りで、時々うっとりしながら匂いを嗅いでいるあやしいわたし(笑)
ハブの背骨(どこからが背骨か?とネタにしてらっしゃいました、笑)のストラップもなかなかにユニークで素敵です。
そして奄美大島紬の缶バッチ。画像が下手でイマイチ伝わらないのが残念ですが、これもとっても素敵でした。
これは別途おみやげコーナーで買い足したものです。
こういうひと手間を惜しまない、ちゃんと手作りしてお客さんに向かわれる、そのお人柄に触れただけで、すでにこれから始まるライブへの期待でいっぱいになりました。
せっかく手渡ししていただいたので、確か「演奏楽しみにしてます!」とか言った気がしますが、ドキドキしちゃって、あんまり覚えてません(笑)
人見知りなので、こういう時、ちゃんとお話したりできないのですよね〜(笑)
そのあとも、開演前、休憩時間とふっつーに一般のお客さんに混ざって、目の前を何度も行き来される主役の方(笑)
間近にいらしたとき、お肌がすべすべで、とりわけうなじがとってもキレイ…なんて思わずみとれてしまいました(笑)
だいぶ年上の、しかも男性なのにスゴイなぁ。
ステージは向かって左側に大きな扇みたいな形の飾り?セット?とおぼしきものあって、これは実はスクリーンになっていて、広がっている時にいろんな映像が映し出されました。
右側に機材。
ステージにはずらーっとパーカッションが並んでいるのかと思ったら全然でした。ステージの上はさっぱりしていて、特に真ん中ら辺は、場所が丸々空いてます。
さらに、開演のちょっと前からは、ずっとステージの上にいらっしゃるご本人。
鳴っているBGMに合わせてステージの端から端までリズムに乗って行ったり来たりしたり、機材を準備されたり。なんだか不思議な光景。楽しみ〜♪
そして時間が来て…
今日のライブは撮影自由ですよ!静止画も動画もOKです。拡散も自由です。むしろ、ライブを見ながらTwitterなどに流していただいて、これからでもまだ間に合いますよ!と宣伝してくださっても全然OKです!なんておっしゃってました。
斬新!!
宣伝にもなるし、どんなことが行われているのか家に居ながらにして知れるというのは、絶対に素敵なことだと思います。
わたしだって興味がある方のライブの動画が流れてきたら、絶対に見ます。
そのうえでさらに興味が沸けばライブのチケットを取ってみる。シンプルだけど正しい音楽との邂逅がそこにある気がするのですよね〜
もちろん誰にでもできることではないですけれど。
というわけで、ド下手なド素人の画像と感想ですけれど、とても素敵なライブを体感させていただいたご縁とご恩返しの意味もこめて、精一杯書いてみます(笑)
さて。

一部の開演にあたり、最初はまっくらから始めます…と説明がありました。

そしてほんとにまっくらになって、そこからライブがスタートします。

この真っ暗っていうのが、ものすご〜く五感、及び想像力が刺激されておもしろかったです。
全神経を耳に…今の音は何が作っているのだろうと耳を凝らします。

鈴のような音。ボールが転がるような音。
左から右へ動く気配。
右から左へ戻る音。
そしてゼロから作り出されるビート。

目が慣れてくるとうっすら見えてきて、でも全体がちゃんと見えるわけではないから、とってもスリリング。それもまた面白いのです。

本当に独演会なので、ステージの上は常にたった一人きりなわけですが、特に前半の部分は本当に無音、リズム「ゼロ」からのスタートで、それはそれはおもしろかったです。
ああ、一人のひとが、今日の気持ちと今日のグルーヴで、これだけのリズム、ビートを創りだせるんだなぁという感動。
どんどんに展開していくリズムのおもしろさ。小気味よさ。
そして、意外と玉川区民会館の音がいいことに驚きました。こんなによかったかしら?(笑)
打楽器の音と一言で言っても、いろんな多彩な音が聴けたライブでしたが、どの音もすっごく快い、いい音なことにびっくり。
はじけるような、はぜるような小気味よい音。
ダダダダっ!とおなかに響く音。
軽い音、重たい音。
ドラム缶のさまざまに表情の変わる多彩な音。
バチや指が当たる場所によっても全然音が違うのがおもしろい。
気持ちの入った音。感情より先に思わず飛び出たような瞬発力のある音。
もちろん非凡な才能ときちんと常日頃から鍛錬されてきた「技」があって、常に真っ芯のいいところにちゃんと当たってるからこその音なのでしょうけれども、どの音も唯一無二のこの日だけの音。

ローランドの、いろんな種類の音を、録音、リピート再生する(のだと思われる)大きな機材がステージの端に置かれています。
その機材の前でマイクを持って、まずは自分の声でリズムを作って、録音するところからちゃんとステージで見せてくれます。
できたリズムのBPMを変えたり、繰り返し設定をしたりして、その基本となるリズムの上にたとえばドラム缶だったり、ドラムだったり、複数の打楽器の音だったりを重ねつつ、どんどん音楽が進んで行きます。

楽器は全部が最初からステージに並べられているわけじゃなくて、一回使うごとにちゃんと出してきて、片付ける、一連の流れまでが音楽を構成する要素みたいになっていて…
かなり重そうなものを運んでいても無駄な音はまったく立てず、しのびやかに美しく出たり引っ込んだりする楽器たち。
外国の方が見られたら、これはこれで様式美のひとつなんじゃないかしら?なんて思ったり。
「所作」という言葉が出てきそうな、スティーヴさんの楽器あしらい。
なめらかな動線を辿り、すみやかに出入りする楽器たち。
まるで暗がりの中、いい音の洪水の中で、ユニークなパントマイム劇を見ているような気持ちにもなってきます。

スティーヴさんはよどみなくステージを動き、自分のひと声から始まった音楽はどんどん厚みを増し、新たなグルーヴを生み、音楽の大海原をどこまでも旅できちゃうような、そんな不思議で楽しい雰囲気です。

うちの大学のわたしの専攻は「リトミック(音楽リズム)」が必修で、いかにして子どもたちに音楽リズムって楽しいよ〜を伝えることを勉強してきているはずなのですが、この日のライブを見ていたら、一目瞭然!!
ああ、小細工なんかせず、とびきりいい音楽を体感する、いいリズムの中に放り込まれる…そんな経験が一番なんじゃないかしら?なんてことを思ったりしましたよ。

この前半の部分は45分くらいの長帳場だったのですが、ちっとも長いとは感じず。
スティーヴさんご自身も暗がりにやられ、どのくらい時間が経ってるのかさっぱりわからなかったとおっしゃてたのが印象的でした。
会場がそこまで広くないので、目が慣れてくると叩いている指先などもいろいろと見えてくるのですが、バチを持たず指で太鼓をたたいている時の指先が真っ赤だったような?
当たり前のことですが、あまりにしなやかに叩いてらっしゃるので、ずっと弾き続けるのは痛いかもしれない…ということに思い至ってませんでした。
すごい運動量でもあるはずですよね。
キビキビとステージを動きながら、片時もビートを手放してないわけですから、維持するにはものすごい体力も必要なはず…というしごく当たり前のことにやっと思い至りました。
だから体型もものすごくスリムだし、中年太りとは無縁の、引き締まったかっこいいボディーなんだなぁ…と思わず見とれてしまいました(笑)

休憩時間には、ふっつーにロビーに現れるご本人。
スタッフさんやお客さんと談笑したり、飲み物の販売機の前に並ばれたり。
販売機の前まで行って「売り切れが多いなぁ〜」とひとりごと。誰かの「飲み物買ってきましょうか?」の声に「いいよ、いいよ。これで大丈夫」…って。
このあたりのやり取りはたまたま居合わせた人はみんな自然に目撃していたものと思われますが、自然体でとっても気さくでおだやかで、素敵な方だなぁと思いました。

さて。
後半になると、ステージはそこまで真っ暗ではありません。
今度は照明なども駆使しつつ、用意して来られたご自分映像とのコラボレーションや秘密兵器?の素敵な楽器とか、いろいろな趣向が凝らされて、とてもおもしろかったです。

たとえば、エトウ7号のコーナー。

「エトウ7号」はこんな楽器です。
ちょっと見ずらいですが、画像をご覧ください。
第一印象は、全然違うけどオズの魔法使いのブリキの木こりを思い出しました(笑)なんでだろう。
金属の身体の部分。端っこが折り曲げられた腕部分。
シンバル状のものの後ろに光背みたいなものがついていて、そこもいろんな形に切り出された?加工された?金属でできています。
モーターで動かす泡だて器の先みたいな形のものや鍵みたいなのもあります。
この光背部分の前部にスティーブさんそっくりのマネキンの首から上が取り付けられてシェイプは完成です。
身体の部分はまさしくスティーヴさんが叩くところで、基本はそこを大太鼓?ドラム?みたいにバチで叩いて音を出すのですが、全体として変形ドラムセット?という感じ。
もしくはエトウ7号の前に正座してスティーヴさんが音を鳴らされているので、まるでエトウ7号が仏像みたいにも見えたり、法要ですか?という風にも見えたりします(笑)
左手に鈴を持ちつつ演奏されて、鈴の音交じりの音がしたり、チーン!と鐘のような音を鳴らしたり、かと思うとドラムそのもののような小気味よい音の洪水が降ってきたり。
この遊び心と心地よいグルーブとのバランスがすっごくよかったです。
これ、動画に撮ったので、なんとかお見せできたらよかったのですが、上手に公開できないのが残念です。
さらにせめて画像だけでも切り出してみたのですが、上手にスクリーンショットが撮れず。使えないなぁ、わたしってば(笑)

ちなみに、この金属でできた楽器は、金属DIYドイトの金属バージョンみたいなお仕事)のお店の方とスティーヴさんが仲良しになって、この方の全面協力により実現したそうなのですが、なるほど!だからその形状や感じが夏休みの工作的な雰囲気を醸し出しているのかと、うれしくなりました。
こういうオトナの遊び心って素敵ですよね〜。
そしてご縁がご縁を生んで新しい作品が生まれる感じ。わくわくします。クリエイティブな人とクリエイティブな人が出会ってさらに自由度が増す感じ。
ちなみにこの金属加工のDIYって今まではあんまり例がないそうで、横浜の方にお店があるそうです。
男の人が集まるのかと思いきや、意外と女性で金属加工をやってみたいという方も多いそうですよ。

そして他には…たとえばこんな感じ。

日本の各地を回って撮り貯めて来られたご当地演奏映像の自分とのコラボのコーナーもあって、これもいろんな土地や海や廃校や、工場とか、いろんな場所で演奏されたご自分の映像の上にあらたにこの日の音を重ねていくというのがとてもおもしろかったです。

同じ楽器同志のコラボだったり、違う楽器との組み合わせだったり、ドラム缶を転がしながら叩いて微妙に変わっていく音色を楽しんだり、ドラム缶に当たる照明や転がって出ている面によって色や光り方が違って見えて、目でも楽しませてもらったり。

なかでも何かを作る工場の、ライン?ベルトコンベヤー?製作過程の大音響とのコラボ映像がわたしはとっても好きでした。
わかりずらいですが、こんな感じです。

自然に生まれる工場の音は、時として耳障りだし、普段ならずっと耳のそばで聞いていたらカチンとくるくらいかも?ですが、スティーヴさんの負けじと出した音と重なると、妙なる調べ?すっごく興味深い音楽にさえ聞こえるのです。

この自然の音と、人があえて作った音が絶妙なハーモニーになって、さらにいかにも工場の猛々しい映像と妙にマッチしていてとてもおもしろかったです。

他にもいろいろありましたが、あんまり長くなってもナンなので、特によく覚えているところをちょっとだけ羅列してみました。

こうやってみると、なんだって使い方次第で楽器になるし、どんな音だって一定の秩序を作れば音楽が生まれるし、たとえばお箸一膳だって豊かな音楽体験はできるわけで。
たとえば無人島に放り出されたりしても、その気になりさえすれば、一日中でも音で遊べるだろうなぁなんて思いながら聴いてました。

ああ、うちの生徒たちにもこの感覚を味あわせてあげたいな。

参加できて本当によかったです。

今後スティーヴさんは関西方面でいろんな活動をなさるみたいなので、ご興味がある方はライブに行ってみられたら楽しいかと。
ただただビートに身を任せることの楽しさ、遊び心の素敵さが存分に味わえることと思います。

ライブが終わって出口に向かったら、スティーヴさんがにこにことお客さんと談笑しながらお見送りしてくださいました。
本当に気さくな方です。
いろんなファンの方と写真におさまったり、ピアノの発表会みたいに、飾ってあったお花をばらして「お花、好きなだけ持って帰りませんか?」なんてみなさんに声を掛けてらしたり。
ああ、子どもの頃、そういえばあそこの会館からずいぶん発表会のステージを飾るお花をいただいて帰ったなぁ…なんてそんなことを思い出してみたり(笑)

あの客席のふかふか加減もよく覚えてたし、発表会の時はちびっこが走り回って先生に怒られてたなぁとか(笑)
ステージで記念撮影の時に、大学生にもなった頃に、名指しで「レインちゃん、きょろきょろしない!!まったくあなたってば!!」と叱られたことを思い出したり(笑)

何より覚えていたことが、会場の向かって右の端っこにある大きな時計。あれはかなり古いんじゃないかな。覚えがありますもん。
そんなこんな、この日の本当に楽しかったライブと、子どもの頃のいろんな思い出がないまぜになりつつしあわせな気持ちで外に出ました。

楽しかったです。