ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

  社会に出るってほんと大変!(追記あり)

 日曜日からずっとご無沙汰してしまいました。
家の中でいろいろあって、なんとなくうわの空のまま1週間を過ごしてしまった感じです。
先々週あたりにアネの過去にやった仕事の失敗が今頃になっておもてに出て、とっても大変な事態になりました。
仕事をはじめて1年が過ぎ、やっと身体も慣れてきたね〜最近はどんどん責任ある仕事をまかされるようになって、社会人らしくなってきたんじゃない?と言っていた矢先のできごとでした。
ミス自体は極めて単純にして絶対にあってはならない印刷ミス的なものなのですが、悪いことにふたつ続いてしまったのです。そして片方は商品の発売日ぎりぎりに、片方はもう何万部も刷り上がった後にわかったので、本人は直後から「絶対にわたしの首が飛ぶ…」とものすごい落ち込み方をしてしまいました。
彼女はアルバイトですが、ほぼ正社員と同じ扱いで保険もあれば税金も引き落とされます。要は見習い期間的な扱いなんだと思います。彼女の会社ではそういう扱いのまま2〜3年を過ごす人がたくさんいます。だから特に彼女が特別というわけではないのですが…
その仕事をしていた当時、毎日ひとりだけ残って11時までとか11時半までとか深夜までひとりで何タイトルも抱えて仕事をしていました。
上司は?と聞くと、いつも定時に「おつかれさま〜♪」と帰って行くよ!とのこと。多分40歳まではいかないであろう女性の方みたいなのですが、会社でもとても怖がられているお局さまです。
今話している相手が去るとその人の悪口になるのはいつものことだし、それを聞くと自分も言われてるんだろうな〜と怖いそう。いるいるそういうタイプ!
そんなことはどうでもいいにしても、彼女がいつもその上司に相談すべきことをわたしに「どう思う?」と聞いてくるのが変だなあと思っていたのです。そんなの聞いてみたら一発でわかるじゃないということを、上司に聞けず同僚と不安げに相談しあったりするのだとか。ヘンな会社です。
どこまでも続く残業地獄のさなか、二十歳そこそこの女の子がひとりぼっちで残っているなんて…と言ったら他の部署には徹夜常連の人やタクシー帰宅常連の人もたくさんいて、遅くなった日は同じ頃まで残業をしている男性社員に最寄り駅まで一緒に帰ってもらったり、別の部署の大先輩の女性にお菓子を分けてもらったりもしていたそうです。いつも彼女の部署で残るのは彼女か横並びの同僚だけで、その同僚も帰ってしまうと気にかけてくれるのが別の部署の人たちっていうのもヘンだなあと思ったり。
アネはお局さまと社員の同僚ふたりとともに仕事をしていたのですが、アネよりも後から入った同僚がやめてしまい、その人のタイトルもすべてアネが引き継いたので、それはそれは追い込まれ、ある時は仕事を持ち帰り徹夜作業をして仕上げてました。
その頃のお仕事のひとつがそんなことになったそう。どうみてもアネのミスで、弁明の余地はありませんが、あんなにがんばったのにね〜…といたたまれない気持ちでいたわけなのです。
さて。
一つ目のミスが分かった時、なぜか上司から何も声を掛けてもらえなかったのだそうです。
叱られもせず、もちろんなぐさめられもせず、バタバタと直しのことやら謝罪の話は進んでいるのに、ミスをした当の本人は蚊帳の外。同僚からは小声で大丈夫だよ!大丈夫だよ!と声を掛けてもらっていたらしいですが、もちろん大丈夫なはずもなく…
あやまりに行っても「今忙しいから。」やめると言うつもりで「話があるんですけど。」と言っても社内メールを送ってもノーリアクション!
そのうちに、アネの精神状態がまたまた不安定になってきて、ご飯が食べられない。神経性胃炎。安定剤を飲まずにはいられない。めまい、吐き気…心療内科ではずいぶんよくなったね〜と言われてたのに!あっという間にまたどんどん症状が悪くなるのが見てとれました。
実際は彼女がデザインして回した仕事は、その後何人ものチェックが入っているはずだから、客観的に見ればひとりのミスだけであるはずもないの?と言ったら「みんなそう言ってくれるけど悪いのはわたしだし。」「しかも上司は何も言わないでひたすら無視!」なぜに?
当然ですが、自分のせいで会社に多大な迷惑を掛けたという気持ちは半端なくて、とうとう先週はまったく昼ごはんも食べられず。毎日まっさらな弁当を持ったまま帰って来る日が続きました。
「それにしてもなんで何も言ってくれないんだろう?せめて叱ってもらえたらいいのに。」とアネ。う〜ん、なぜだろう。
定時過ぎてから上司のところに行って話してみれば?とアドバイスしてみても「だって気がつくともういないんだもん。」とアネ。逃げるように帰ってしまうのだとか。なぜ??
話をいろいろと聞いていくと、どうやら彼女が言葉を掛けたり叱ったりしてほしいのは他の誰ならぬ上司なのだな〜と気がつきました。
そんな針のむしろの毎日を過ごしていて、それでも全然話を聞いてもらえないうちに先週末になんとふたつ目のミスが見つかってしまったそう。
これまた同時期の仕事で、もう何か月も前に終わった仕事ですが、今度ばかりは本気でクビになると言いながら、真っ青な顔で出かけていきました。
今までにミスらしきことはほとんどなかった彼女に立て続けにふたつ起きたミス。これではミスしたのがわたしでもきっとやめたい気持ちになるだろうな〜と思いながら見守っていたわけです。
最近時々真っ白な顔で無表情に「もう全部終わりにできたらどんなに楽だろう」と不吉なことを言うので、とてもとても怖くなって、彼女の腕にむりやりわたしの薬師寺でいただいた数珠を装着させてみたり…しょせん母ができることなんて、神頼みくらい。そんなにはありません。
オットは何十年も会社員をやっている現役のサラリーマンだし、わたしもOLをしていたので、上司の対応には首をかしげるところもたくさんあったのですが、とりあえず社会人として今やるべきことをアドバイスしたり、彼女から目を離さないようにかなり緊張した日々を送ってました。
とにかく会社へ送り出した後は「なにごともなくちゃんと家に帰ってきますように。今日も一日彼女が乗り切れますように」と祈るしかありません。人身事故のニュースを聞くたびドキっとします。そんな極端な話じゃなくても、こんな状況で往復2時間の通勤はさぞや大変だろうな〜と思ったり。
それにしてもなぜ社員の同僚の倍の分量のタイトルをバイトの彼女がひとりでやらされているのか?全員が帰ってからも、なぜひとりで何時間も残業させられているのか?それは育ててもらっているということなのか?それとも使い捨てられているのか?…よくわからないことだらけです。
そうしたら、ある日突然いきなり今までほったらかしだった上司に呼ばれて「アンタ社会人に向いてない。二度もミスするなんて問題外。どれだけまわり中に迷惑がかかったと思ってるの?」などと今までの分も一緒に?というくらい、怒涛の勢いで叱られたのだそうです。
その叱られ方もすごくて、朝「後でお話があります!」と予告されたのに、叱られたのが帰り際。この日一日は本当に長かったそうです。
何よりもびっくりだったのが、「なんであんなミスをしたのに、アンタはまったくこたえてないの?」的なことを何度も何度も言われたそうなのですが、お昼ご飯もまったく食べられず、どう見ても真っ白な血の気のない顔をして息もたえだえに仕事に行っている彼女のどこを見て、こたえてないと思ったのか?ちょっと理解できなすぎて、びっくりしました。
「おかあさん、どうやったら本気で堪えてるということを立証できるんだろう」とアネ。言い分はもっともです。「たとえば目の前でぶっ倒れるとかしなきゃ、あの上司には伝わらない。いっそのこと…」
「やめて〜!やめてよ。冗談じゃない。」
お説教のラスト1分で「あなたには期待してるんだから、早く常識がある社会人に育ってちょうだい」…的なことも言われたそうで、とりあえず首はつながった模様ですが、なぜ叱るならもっと早いタイミングで呼んでくれなかったのか、まったくもって謎だらけです。
更に今も聞えよがしに別の同僚に「だれかさんのせいで、もうほんとに仕事が増えちゃって〜」と一日言われ続けているのだそうで、ったくどうにかならないのかね!上司くん。
今回のことで彼女が何度も「責任を取ってやめたい」と言っていたわけですが、ここでやめたらただ失敗したという事実だけが残って、あなたの人生のためによくないと思う。他の仕事は全部きちんとやっていたことも全部消えちゃうよ。ここが我慢のしどころだと思う。名誉挽回してからやめた方がいいんじゃない?と何度も言いました。
やめることが責任を取ることじゃないよ。続けてこその責任じゃない?人生には絶体絶命のピンチは何度もある。おかあさんだっておとうさんだって何度も何度もくぐってきたよ。でも逃げ出せないことはいっぱいあるんだし、そこを乗り越えて初めて見えてくるものがある…
社会に出れば理解ができないヘンテコな人もいっぱいいるし、誰もが味方ってわけじゃないけど、誰もが敵ってわけでもないよ。
現に別の課の人たちとか、同僚の中には「あなたがいつもちゃんとやってるのはわかってるよ」とそっとなぐさめてくれた人たちも何人かいたじゃない!同僚だって、やめちゃダメって言ったんでしょ?!
とにかく次のミスをしないように、以前のミスを引きずるのはやめにしなさい。きちんとした仕事を重ねていればきっと信頼を取り戻せるから。そんなことを毎日毎日何百回と言いました。
でも、精神的に不安定になった心にはマイナスの言葉は100倍になって響くのに、プラスの言葉はなかなか入っていかないのですよね。
まったく人の心ってむずかしい。
それで、何度でも同じことで不安がるアネに何度でも同じことを言って「大丈夫じゃん!」と無責任に繰り返す母という図式が、ずっとずっと毎日深夜まで繰り広げられていたというわけです。
さらにこんなことを言ったら殴られそうですが…
「あのさ〜多分だけどさ!いつもアンタさ、他の人のことも上司がぼろくそに言ってばかりいて、聞いてて怖いとか言ってるじゃない?きっとそうこうしているうちに、アンタのじゃない次のミスが見つかって、アンタはお役ごめんになるよ。」と言ったのです。
そしたらなんと…翌日になって「おかあさんの予言が当たった!ほんとに別の人のとんでもないミスが見つかって矛先が違う方へ向いたから、今日わたしはちょっと楽だった!」とアネ。
まだまだこのバトルは続くかもしれませんが、とりあえず我が家にとって最も大切なのはわが子の命であり将来です。
あまりにも考えられない事態が続けばタオルを投げることも考えたいとは思っていますが…とりあえずは負けてほしくないなあと思います。
そんなことがあって、毎日毎日夜10時も過ぎてからあーでもないこーでもない相談に乗っていた毎日でした。
それにしてもむずかしい世の中になったものだと思います。
わたしが新入社員の頃はそもそもバブル期で同期の女子社員だけで30人もいたので、腹が立つことやふざけんな!話はみんな同期と分かち合いました。母や父に愚痴る必要もなかった気がします。
でも当時バリバリ働いて出世頭?と言われていた男子同期の中にもうつ病でずっと休んでいる子もいるし、今では50代だって40代だっていつ心の病に追い込まれるかわかりません。
気の毒なことに不況なのでアネには同期もいなければ、近い年の子もいないみたいです。専門学校の子たちの中にも職がない子がたくさんいて、愚痴などこぼそうものなら「まだ働き口があるだけいいじゃん!!」ということになるらしいです。
以前のわたしだったらもうちょっとアネを突き放していたかもしれませんが、数年前に「さようならおかあさん。」と言って携帯を切られて自転車で彼女が行きそうなところを探しに探したあの日以来、とにかく彼女が追い込まれたら後悔しないように、いつ何どきでも絶対にとことん話を聞こうと決めました。
ここのところとっても順調にいっていたので忘れかけていましたが、久々にやってきた大あらし。
いつか完全が心身ともに自立できる日が来るまで、もうちょっと支えてあげなくてはと思っています。

追記です:下記拍手コメントをいただきました。ありがとうございます。
「19:11 こんばんわ。本当に毎日何百回もそんな叱咤激励されたのですか・・?会社でもつらい思いをして、帰ってきて毎日何百回も・・・?正直怖いって思ってしまいました。ご自分の思い通りの娘さんでないと気がすまないみたいなものを感じてしまいました。ご家族の何の歴史も知らないのに申し訳ございません。でも離れて暮らした方が、母娘双方にいいのではとおもいました。」

多分「叱咤」はしてないと思うんです。こういう病気を持っている人に叱咤してしまうのはどれだけいけないかというのは散々勉強しましたし。
ただ、大丈夫かな?やめなくて大丈夫かな?
何度問いかけても不安な彼女に、何度も何度も「やめなくて大丈夫」「やめなくて平気」と言い続けたのでやっぱりこれも一種の叱咤なのかもしれないですね。どうすればよかったのかな…とまた大きく迷い始めました。
うちの娘の場合、ほったらかしておくとすぐに「見放された」と気に病むところがあって、お医者さまからもとにかく「辛抱強く聞いてあげて。答えてあげて」と言われているんです。
そんなこんなで現状ではこのやり方がベストかなあと思いながら親子でいびつな問答を繰り広げているわけですが、客観的に見たらものすご〜く怖くて異常なことなのかも…とあらためて思いました。
普通であるって本当にむずかしいことですね。めざしているのは普通だったり体裁よく暮らすことではなくて、家族みんなが笑顔でいられるのならば、変だってちっとも構わないとすら思っていますが(笑)
彼女が心身ともにちゃんと健康になった折には、独立してちゃんと自分の家庭を築いてほしいと思っています。その時のための今だと思っています。
もっともっとちゃんとしなくちゃダメだなあと思いました。気が引き締まるひとこと、心からありがとうございます。
幸いにも娘はだんだん元気になりつつあって、さっきとっても元気な声で帰るコールがありました。