ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

 いろんな子がいます その2

 下に書いた生徒たちは、みんな小学生でまだまだかわいいお年頃ですが、今から書く生徒Nちゃんは高校2年生です。
 この子は側弯症とか弱視とか貧血とかアトピーとか、小さい頃からいろいろな病気を持っていて、長期入院したこともあるし、とっても大変な思いをしています。妹はこの日記でも何度も話題にしている幼児の頃「うぜーよ」が口癖だったなにかと話題の通称「うぜーよちゃん」です(笑)
 ご両親は共働きでとても忙しいおうちですが、土曜日には親子で餃子を作ったり、ハンバーグをこねたり、必ず年の離れた姉妹と一緒にお料理をする楽しそうなご一家です。
 おとといのレッスンの時、Nちゃんが「なんで、わたしってこう不器用なんだろう。もうヤダ」と言いました。どうしても右手と左手が一緒に動いてしまい、弾き分けることができません。
 確かに彼女はとっても不器用で、ピアノがなかなか進んでいきません。高校受験のとき、1年間ピアノを休んだし、そもそもピアノを始めたのが妹と同時で、中学生になってからだったので、そのハンディもあって、あっという間に妹に追い越されて、バイエルの60番あたりをゆっくりと進んでいます。一方の妹は85番あたりを進んでいるので、あせりもあるのでしょう。
 でもそんなことはわたしにとってはどうでもいいことで、今何番をやっていたって、追い越し追い越されることはいくらでもあるし、初級の時の進度と先になってからの進度は必ずしもイコールではないので、そのことは折に触れて伝えてきたつもりでした。
 むしろ、テニス部に所属していて毎日帰りが9時前だし、土日も部活があって当たり前だし練習もろくろくできないだろうに、そんな中でよく滅多に文句も言わずピアノにも通ってくるな〜と感心している生徒のひとりでした。
 なので、「誰にだってスランプはあるよ!妹のうぜーよちゃんだって、いつもうまくいってるわけじゃないよ!」と言ったら「わたしね。いろんな病気があって学校を休むことが多いし、人よりバカで成績も悪いし、要領が悪いし、ピアノだって誰よりも下手だし・・・本当にいいことなしなの。」と彼女。
「おまけにおかあさんも妹よりわたしにすごく厳しいの。犬の世話も散歩も絶対にわたしだし、妹の世話もあるし。妹なんて成績もいいし、なんだってできるし・・・わたしバカみたい。」と彼女。ピアノがうまくいかない話から、すべてがうまくいかない話にいつの間にかすりかわって、思わず本音が出てしまった感じです。
 確かに妹のうぜーよちゃんは頭の回転がすごく速いし、何をやっても要領がいいのです。そしてあり余った好奇心とエネルギーを発散すべく、ちょっと離れた進学校に通う3年生です。
 すごく仲良しの姉妹ですが、実は妹にコンプレックスも感じているおねえちゃんです。一方で妹は、誰よりものんびりしたおねえちゃんが大好きで、なんでもまねっこしているんですけどね(笑)そのことももっと折に触れて教えてあげなくては!! 
「多分だけどさ、いろんな病気があるからこそ、おかあさんはアナタを厳しく育てなくては〜と思ってるんじゃないかしらね!?将来人一倍つらいことがあるかもしれないけど、それに負けないあなたになってほしいんだと思うよ。だから、特にしつけとかお手伝いとか、そういう面でアナタにとっても厳しくしているんだと思うわ。」
「でも一方で、姉妹ふたりともすごくかわいがられてるのもちゃんと自覚してるでしょ!?共働きで忙しいのに、高校生のアナタのレッスンノートにもあんなにちゃんとコメントを残してくれて、熱心に読んでくださってるおかあさん、なかなかいないわよ!」
「アナタがそうやって、たくさん家の手伝いをして、妹の面倒や犬のお世話も手を抜かず、ほがらかなところはご近所でもみんな知ってるよ。身体が弱くったって、高校が進学校じゃなくったってそんなことは関係ないよ。犬仲間の間でも、すごく気持ちがいい女の子だねって言われてるし、わたしだってレッスンのとき、いつもアナタの一生懸命さに打たれるもの。」
と思ったとおりを言いました。
 同じことをやらせても器用にどんどん進める子もいれば、彼女のように不器用で全然進度が遅い子もいます。
 不器用な子はなかなか成果があがらなくて、器用な子の何倍もしんどいでしょうけれど、一方でむずかしい局面に対しての耐性がひと一倍備わっている気がします。(同じようにむずかしい病気を持って、とことん不器用なうちのオトートも然りです、笑) 
 だから、余程のことがないと絶望しないし、最後方からだってマイペースに追いかけて、遅れながらでもいつのまにかちゃんと実力がついてきています。
 器用な子は器用な子なりに覚えるのも早いけれど一旦身につけたことをすぐに忘れてしまったり、ひとつのことに集中しきれなかったり、なんでもできると思われて苦しくなったり、それぞれに悩みはいつだってあるんだろうなあと思います。
 彼女以外にもすごく進度が遅い子もいれば、調子ばっかりよくてちょっとどうよ!?と思う子もいますが(笑)どんな子もちょっと距離がある習い事の先生という立場のせいか、本当にかわいいです。
 本人があきらめたと言わない限りとことんつきあっていけたらいいなあ。
 そんなこんなで、Nちゃんは言いたいことを言い尽くしたらまた元気になって、「これから犬の散歩に行かなきゃ〜」と言って帰って行きました。来週こそ弾けるようになりますように!!ファイト!!