ふぇるまーた2

かたよらず、こだわらず、とらわれず。好奇心のおもむくままにどこまでも。

[日記] オトート中学卒業に寄せて

 今日はオトートの卒業式だったのですが、なんとも寒くてぶるぶる震えながらの式でした。こんなに寒い卒業式も珍しい気がします。スーツの上にどうしても何か羽織るものがほしくて、アネの高校仕様の真冬のPコートを借りたのですが、式の途中にはやっぱり着たままというわけにはいかず、ものすごく寒かったです。
 式が始まる直前に、折りしも隣に座った友達の携帯にメールが入り、彼女の下のお子さんがやっぱりインフルエンザだったことが発覚しました。まだまだインフルエンザが流行っています。オトートの中学の1年生は今週、毎日昼間でで学年閉鎖状態。今日の卒業式でもっと、爆発的な流行に至らなければいいのですが・・・
 さて、オトートも無事に卒業しました。この子に関しては、勉強はお世辞にもできるとは言えませんが(多分、成績は後ろから数えた方が早かったかも)、とにかく真面目で不器用ながらも一生懸命だったので、3年間の学校生活の間に、何人もの先生に「がんばってますね!応援してますよ!」と常に声を掛けていただいていました。成績表の左側はまあまあからちょい下くらいをさまよっていましたが、右側の素行欄はいつもたくさん丸がついていて、常に委員会をやったりして、人のために地味に働き、充実した3年間だったのではないかと思います。
 筋力が足りなくて、できないこともたくさんあったでしょうし、あまり愚痴は言いませんが悔しい思いをしたこともたくさんあったでしょうが、この様々な試練を乗り越えた経験が今後の彼を支えてくれるといいなあと思います。
 わが子ふたりでもずいぶん性格が違っていて、アネはひらめき型の人間で、誰も考えつかないようなアイディアを持っていて、頭の回転も早いのですが、一方で心が繊細すぎて、薄い硝子のような心はいつ破けてしまうとも知れず、見ていて心配でなりません。
 それに対してオトートは、何度も何度も同じことを教えてもらわないと身につけることができないし、ひらめきとか独創的とかそういう言葉とは無縁な感じでしたが、それはそれとして、どんなにつまらないことにでも一生懸命手を抜かず取り組み、できなくてもむずかしくても弱音をはかないというまっすぐさで、先生や友達の心を動かしつつ、ちょっとずつ前に歩みを進めてきました。
 アネは多分、その独創性と繊細さを生かして、クリエイティブな職業に就くことを目指してゆくのでしょうし、オトートは、どんなつまらない人がバカにするような単純作業も手を抜かず決して休まずがんばる底力を持っているので、そういうところを生かせる場として、公務員を目指したいなんて言ったりしています。もちろんまだまだ、変わるでしょうけれど。
 筋ジストロフィー症がわかった時には、中3の今まで、こんなに元気で他の子達と一緒になんら不自由なく卒業の日を迎えられるとは夢にも思えない日もありました。もし進行が早い型なら、大人になるまで元気で生きていられる保障はありませんとまで言われた彼です。そのことがわかった瞬間はどんなに怖かったか、どんなに泣いたか思い出すのもはばかられます。
 ところがありがたいことに、年月はあっという間に刻まれて、中3になってからどうやら進行が遅い型だということがわかり、部活も人並みに運動部を3年間続けられ、試合にでる経験もできましたし、筋力が足りないながらも普通の中3と同じように、すべての授業の過程を終了することができました。友達に困ることもなく、3年間常に誰かと仲良くしたり揉めたりを繰り返しながら、わいわいと3年間を終えました。
 これは当たり前だとは思ってはいけないなあと常に思っています。本当にありがたいことだと心の隅っこで思っているのですが、今日は卒業式だということもあって、ことさらそのことが身に染みて感じられました。
 神様がもしいらっしゃるなら、心からありがとうと感謝したい気持ちでいっぱいです。五体満足な身体に産んであげられなかったことは、わたしにとっては一生の不覚ですが、そのお陰で、なんでもないことかもしれない「無事卒業」の4文字が何よりもありがたくて、誰彼ともなく感謝の気持ちを伝えたいくらい感動的なものになっています。
 その彼は、4月から自分の意志で遠くの高校を選びました。1時間強かけて、電車を乗りついて新しい高校に通います。通学の途中で筋肉が疲れたりしないのか、3年間通いきれるのか、心配事は限りなくありますが、本人があまりにも頑固で自分の意志が強固なので、見守るしかありません。もちろんまだ心の健康が万全でないアネに対してと同じように、彼に対しても万全の態勢で支えるだけの心づもりはしております。でもアネにせよオトートにせよ、結局は自力で歩いていってもらうしかないわけで、母の一番のお仕事はたぶん、黙って見守るということなのでしょう。
 うちの子供たちはふたりとも、進学についてもその人生においても、順風満帆とはお世辞にも言えませんが、彼らの行く先にしあわせが待っているといいなあと母はつくづくと願っています。子ども達が大きくなるに連れて、母には何もできることがなくなるのがせつないのですが、親の想いはただひとつ。彼らがどうぞ、ずっとしあわせでありますように・・・